※ボスの実妹





突然だが、私はヴァリアーのボスである、ザンザスの実の妹である。黒い髪に赤い目。手から炎が出たり、目つきが悪くないという点を除けば結構似ていると思う。
朧げな記憶だが、小さい頃母とも呼べるかわからないような女に兄と共に売られ、優しい目をしたお爺さんの元で何不自由無く育てられた。それを良いことに、兄は随分とふてぶてしくなってしまったが……私はどうしても、そのお爺さんが信用できなかった。

だって私は、どうやったって炎は出せなかったのだから。これは勝手な、私なりの反抗だと、今なら思える。でも確かにあの薄汚い女は、私の母である。そして、ザンザスもまた実の兄。ならなぜ、私は炎が出ないのか?答えは簡単だった。兄はこのお爺さんが父だとしても、私の父はこの人ではない。今まで優しくされてきたが、私はまだこの人に心を開いたことは無かった。心以前に、会話も、目を合わせることもあまりしていない。最近では全くと言って良いほど無くなってしまった。


そんな中、最近兄の様子がおかしくなった。あまりふてぶてしい態度を取らなくなった。この前のパーティでは明らかに誰かを睨んでいたが、人混みのせいでそれを確かめることは叶わなかった。そしてたまに、ただ部屋に篭り、何かに物凄い怒りをぶつけていることもあった。そしてその怒りがただものではないのは確かだった。誰も、兄に近づくことは出来なかった。

その頃、兄の周りにはぽつぽつと人が集まりだしていた。スクアーロを始めとした、ちょっと変わった奴らだが、みんなは、兄のように優しい声で、私の名前を呼んでくれるのだ。その声は何となく落ち着くことが出来る。不思議だった。

そんな彼らに兄の様子を伺うと、スクアーロだけは、兄を放って置けと注意してくれた。だけど私は納得できなかった。
今夜は、兄の部屋に行こう。そう決めて、兄の部屋の扉を数回ノックした。


「……なまえか…。」


『お兄ちゃん、最近、変だよ。どうしたの?』


私が聞けば、兄は少しだけ考え込むように目を伏せた。そしてしばらくした後、その赤い目が私の赤い目を捕らえる。


「てめぇは、九代目が嫌いだったな。」


『どうして、あの人の話…』


「俺達は明日、クーデターを起こす。」


クーデター。兄は確かにそう言った。私を見る真っ直ぐな瞳は、とても嘘や冗談で言っているのではないと、すぐに悟った。そもそも兄はそういう類は言わない。
誰に対するクーデターなのか、そんなことは言われなくてもわかった。兄と共に生きてきたこの世界。なのになんだか孤立していた私だけの世界。それを明日、全てを壊す。

ゾッとする前に、なんだかワクワクした。気がつけば私は頷いていた。そして兄の手の甲にキスを落とす。一生ついて行くよ、私だけの家族。そう言えば、兄は久しぶりに、私だけに笑ってくれた。








そんな気がした、だけだけれど




これからも兄と、
ザンザスと一緒に
生きていく




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何が書きたかったのか……
暗いのかシリアスなのか…



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