談話室の窓際。ベルはそこで一日中頬杖をついたまま座っていた。彼がそうしている理由。それは同じ幹部であるスクアーロやルッスーリアにとってわかりやすいものだった。

原因はベルと同期であり、彼女であるなまえだ。彼女、と言ってもそれは最近のこと。ベルの方から思いを告げたのはつい一週間くらい前。
つまり、付き合いはじめて一週間でこの仲なのである。


「ゔお゙い、何腑抜けてやがる。」


「……。」


声を掛けられたら無視できないくらいの声量を持つスクアーロが、何度話し掛けたところで反応はない。ベル独特の髪型のせいで一瞬寝ているのかと疑ってしまうが、時々吐かれる溜息でそうではないのだと判断できる。

ああそれにしても鬱陶しい。スクアーロは何度この言葉を呟いただろうか。こっちが溜息つきたい気分だぜぇ。


「(友達の延長線みたいなもんだったしなー…。)」


ただ外を眺めているだけのベルの頭の中では、いろいろな言葉で埋め尽くされていた。考えすぎて、喧嘩のそもそもの原因すら忘れてしまった。ということはやはり、どうでもいいことから喧嘩に発展してしまったのだろうか。


「(…俺らに恋人の真似事は無理ってことか…?)」


自分でそこまで考えて、眉間にシワを寄せた。そんなことはない。今まで、ここまで、一緒にやってきたのに、恋仲になったらうまくいかないなんて、そんなもんは信じない。
だが喧嘩してしまったのは事実だ。ああ苛々する。殴りたい。なんでもいいから物に当たってスッキリしたい。こんなの王子じゃねーし!


「ベルちゃん、意地張ってないで、そろそろ仲直りしたら?」


「いい加減うぜぇぞぉ。一日中、んなとこに座りやがって。」


再び耳に入ってくる同僚の声。違う、俺が聞きたいのはこんなでかい声でも、変に高い声でもない。あいつの、なまえの声だ。謝ればいいのか?謝ればあいつの声が聞けるのか?ここは俺が折れるべきなのか?
ああダメだ。また苛々してしまう。


「……なまえに会いたい。」


久々に出した声は、掠れていた。外を眺めながらポツリと呟いたベルの声は、そこにいた二人を困惑させた。待て、お前らは今喧嘩中でだなぁ。


「なまえちゃんに謝る気になったのかしら?」


「ちげぇよオカマ。あいつの声聞きたくなっただけ。」


「喧嘩中にも惚気んなぁ!」


ギャーギャー騒ぎ出したスクアーロは放っておいて、ベルはゆっくり立ち上がり体を伸ばす。何時間同じ体勢だったのか。体の何処かから骨の音がした。

ぐるぐる考えていたさっきまでの自分が嘘のようだ。軽い足取りでなまえの部屋へと向かう。きっとベッドの中にでも潜ってんだろ。

あいつの声が聞きたくなったから会いに行く。そん時についでに謝ればいいか……原因なんて忘れたけど。俺が謝るなんてレアなんだからな。

喧嘩中だろうが気にしない。
だって俺王子だもん。








素直に生きてますが、何か?








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スクアーロとルッスーリアを友情出演させるの大好きです。

それにしてもベルさんは何しててもかっこいいですよねー…。それを表現したいです。



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