※勝手な妄想
※パートナー無
※ベル目線








それは、まだ俺がヴァリアーに入って間もない頃の話。





「うししっ!なまえ、王子と遊べー。」


『わ、ビックリしたぁ。急に抱き着いて来ないでよ。』


「だって俺王子だもん。」


まだ慣れない環境で、いつも一人だった俺に優しくしてくれたのは、なまえだった。ジャッポネーゼであるなまえの髪は茶色くてふわふわで、いつも良い香りがしたのを覚えている。


『でもごめんね。私これから任務なの。』


「えーつまんねーっ。」


『帰ってきたら、一緒に遊んであげるから。』


ね?と目を細めて笑うその困ったような顔は、なんだかいつもの我が儘も言えなくなってしまう。俺が素直に(と言っても渋々だが)頷けば、なまえはいい子、と頭を撫でてくれた。それはとても心地好かった。
頭を撫でてくれるのは、なまえだけだったからかもしれないが。


何年か経って、俺にも一人で任務を任されるようになった。たくさん殺せたのが楽しくて、その日の夜は興奮してなかなか寝付けなかったのを覚えている。自由に殺せるのが嬉しかった。そしてそれと同時に、スクアーロやなまえと同じ位置に居ることが嬉しかった。

これでもう置いてきぼりにはならない。なまえにいい子、と頭を撫でられながら拳を握って我慢していた俺は、もういない。


『凄いね、ベル。もう幹部になっちゃうなんて!』


「ただのガキだと思ってたのによぉ。」


「しししっ、王子ナメんな。」


スクアーロやなまえと一緒に任務を熟(こな)すことも多くなった。楽しかった。急に世界が広がったような気がした。俺はまだまだやれる。この世界で俺はどこまでも生きて行ける気がした。



その日は、夜中に目が覚めた。もう一度眠ろうと目を閉じても、寝やすい体勢に動いても、一度覚めてしまった頭はちっとも眠ろうとしない。少しだけ苛立った俺は、夜風に当たろうとバルコニーに出ることにした。確か、廊下の突き当たりだった。

適当な靴を履いてペタペタと静まり返った廊下を歩く。夜に歩いたのは初めてではないが、改めて見ると不気味な屋敷だ。不気味と言いながらもここに住んでいる自分が笑えてくる。

ふと、ボンヤリとした明かりが視界に入った。

不思議に思って興味本位で近付いてみると、話し声が聞こえてきた。良く知る声……それはボスであるザンザスとスクアーロ、そしてなまえの声だった。


『でも、やっぱり私は賛成できないよ…。』


「いい加減諦めやがれカスが。あいつが望んだ世界だ。止める義理はねぇ。」


『だってベルはまだ子供なんだよ?それなのに…。』


は?俺の話?
すっかり覚めてしまった頭はすぐにフル回転し、気配を消して扉に張り付いた。こんな夜中に、しかも自分の話をしていたら、誰だってこうするに違いない。


「ベルは幹部だ。今まで殺ししかやらせてねぇが、幹部なりの仕事もやってもらう。」


『ベルが望んでいるのは今の世界よ!私達みたいに、こんな深いところまで来させる必要はないわ!』


「でもよぉ、ベルにしか出来ねぇ仕事もあるんだ。あいつは八歳の時からここにいるんだぜぇ?そこら辺はわかってきてんじゃ……。」


『私はベルが、楽しそうに笑っているベルが壊れるのを見たくない。』


「壊れたりしねぇよ。この世界の深さを知ってて、あいつは飛び込んで来たんだからなぁ。」


『でもっ……それでも私…。』


ギリッと、歯を食いしばる音がした。こいつらは、今何の話をしているんだろう。この世界の、深さ?マフィアの仕事ってのは、殺しだけじゃ無かったのか?もちろんヤバいもんの売買とか密輸とか、その辺の事もしているマフィアはたくさんあるが、ここも、そういう類だってのか?

スクアーロやなまえと同じ位置に並んだって思っていたのに、まだまだスタートラインに立ったばかりだってことなのか?

なんだか凄く重苦しくて、ドロドロした感情が湧き出てきた。もう気配を消すことも忘れ、指で扉を押し進める。キィ……と音が響いて中に入れば、蝋燭に照らされている三人の顔が、ひどく驚いていたのが滑稽だった。


「ねぇ、俺の知らない世界ってやつ、教えて?」


俺はどんな顔で笑っていただろうか。










まだ貴方の知らぬ世界







知られたくなかった。

深いこの世界に入れば

後戻りは出来ないから。




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よくわかんねぇっスけど、こういう妄想をするのが好きです。


ベルの話妄想系が多いな…。



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