求めたのは真実。教えられたのは夢。起こしたものは一時の感情。
八年。八年間も、私達は待っていたのだ。誰もがその怒りに惹かれ、魅せられた。何があろうとも、どんなことをされようとも、私達は耐えてきた。生き抜いて来たのだ。
「ねぇスクアーロ。俺達いつまで待てばいいの?」
「もうすぐだぁ。もうすぐ、俺達のボスさんに会える。」
「…俺、もうおかしくなりそー…。」
ベルが弱音を吐き始めたのも、この頃だったと思う。ベルだけではない。レヴィも、ルッスーリアも、ただ眉間に皺を作り、いつ来るのかもわからない"その日"を待っているのだ。
そんな中でも、スクアーロだけは真っ直ぐ、その鋭い目で前を見つめていた。でかい声で、ニヤリと笑って「もうすぐ」を繰り返す。ベル達はその言葉に信用を無くしていたが、なぜか私は信じられた。
だから私も前を見続けた。他の隊員にボスのことを悪く言われようが、みんなのことを非難されようが、私はただ毎日を生き抜いた。苦痛なんて感じない。ボスの、ザンザスの尽きることのない怒りが、唯一の支えだった。
そしてその時はやってきた。
八年。八年間も、私達は待っていた。スクアーロに呼ばれた一室へと足を運べば、そこには堂々たる姿のボスがいた。みんな口は悪いけれど、心の中では物凄い歓喜の声でいっぱいなのだろう。ベルは明らかに機嫌が良かった。
私はただボスを見つめていた。みんながボスの周りを取り囲む中、私は未だに扉の前で立ち尽くすのみ。そこにいるのは、本物のボスなのだろう。だけど足は動かなかった。タイミングを逃したのだろうか。何かきっかけが欲しかった。
ボス、何かご命令を。私に貴方の声を聞かせてください。気持ちを込めてボスを見つめていると、カチリとボスと視線が合った。ボスはしばらく私を見た後、フッと鼻で笑った。
「来い、なまえ。」
周りでみんなが騒いでいるのに、ボスの声は私の耳に綺麗に響いた。それは、ボスに出会って言われた言葉。この世界に入るきっかけになった言葉…。
気づいたら私は大泣きしていて、スクアーロに殴られるまでザンザスに抱き着いていた。
情けない声で泣いて、頼りない泣き顔を見せながらも、さっき呼ばれた自分の名前を何度も何度も頭の中で繰り返していた。
たった一言をその声で
求めたのは真実。
貴方の声が聞きたかった
教えられたのは夢。
貴方の声で聞きたかった
起こしたものは一時の感情。
私の名前を聞きたかった
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ボス大好きです……!!
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