あれ、おかしいなぁ。なんでこの人立ってるんだろ。私結構パンチには自信あったのに。試しにもう一回殴ってみる。遠心力も味方につけて。でもダメだ。ピクリともしない。なんだこいつ。
『なんでだろ…。』
私が不思議に思って自分の拳を見、次いで目の前の男を見る。フフンと鼻で笑ってやがる。マジでなんだこいつ。
「そのようなヘナチョコパンチ、ボスの愛に比べれば造作もない!」
……は?愛?何言ってんの。やばい、顔を殴ったつもりが変なスイッチ入れちゃったのかもしれない。ていうかボスって誰。
『私のパンチ喰らって立ってる奴は初めてだ。』
「そんなこと俺はどうでもいい。」
ムカつくことに正論だ。なんだこいついちいちムカつくな。今のは私の独り言なんだから返事すんじゃねぇよ、まったく。
「それで……終わりか?」
そしてまた鼻で笑うもさい男。あぁあ腹立つ!こうなったらもう目茶苦茶に殴ってやる!どこかに弱点とかあるはず!
『うりゃああああ!!』
当たってる、当たってる、当たってる、――……。当たってる、のに、平気な顔して立ってやがる。いやむしろ笑っている。…笑っている!?マズイ、私は物凄く変な奴に出会ってしまったのではないか?
「ボスに比べれば……かすり傷だ。」
だから誰だよボスってぇぇぇぇ!!!私のパンチ喰らいながらそんなことを呟く。なんか……ダメだ、いろいろと勝てる気がしない。少し息があがって来て、スピードが落ちた瞬間、その男に腕を掴まれた。
『っ!』
「だがなかなか良い拳だ。名は何と言う。」
グググ…と力を込めてみてもびくともしない。見た目で判断して襲い掛かってしまったが、この男実はすごい奴だったんだ。弱い自分がムカつく…!
『っ私はなまえ…貴方は?』
「俺はレヴィ・ア・タン。ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーの幹部だ。…名前だけでも覚えておくがいい。」
男…レヴィは言い切ると私の腕をパッと離した。ザッと瞬間的に距離を取る。あーぁ、掴まれていた手がジンジンする。
レヴィはそんな私をしばらく見つめた後、ゆっくりとその場を去った。
『(ボンゴレ…独立暗殺部隊………ヴァリアー…。)』
ボンゴレという名前は、前にちらりと聞いたことがある。そんじょそこらのマフィアとは違う、名高い組織だと。
私は結構、すごい奴に手を出してしまったのだろう。すごいにはいろんな意味も含まれているが。
少し険しくなった道を選んだ私は、レヴィと反対方向を走り出す。またいつかどこかで出会えたとき、今度は必ずダメージを与えてやるんだ。そして、姿もわからぬボスとやらをも越えてみせる!
目指すは小さな可能性
「ゔお゙ぉいレヴィ!何ニヤついてんだぁ!」
「妖艶な娘と…出会った…。」
「うっわ、きンもー。王子にあんまり近付かないでくれる?」
「ベル貴様ぁぁぁ!!」
--------------
レヴィたん(^^)どんまい
← →