『るっすうううう!!』


バタバタと騒がしく廊下を走るのは、幹部で唯一の女であるなまえ。え?アタシ?アタシはほら、"オンナ"ってやつよ。違いがわからないなら勉強してらっしゃい。まぁ特に違いは無いのだけれど。ン?腹筋に違和感が……あらヤダ!なまえの事忘れてたわ。


『ぐすっ…るっすぅ……ふえぇ…。』


あぁもう可愛いわねぇこの小動物。どうしてくれようかしら。とりあえずこの涙を止めなくちゃね。原因は大体検討がつくわ。


『ボスが…花瓶っ…ひっく……あたま、にいい……。』


「あーよしよし泣かないのっ。」


さっきの割れた音はやっぱりこの子だったのねぇ。まったく、ボスも少しは女の子の扱い方を知るべきだわ。毎日毎日こんな小さな子を泣かせて…。
アタシがぎゅっと抱きしめると、ふうううと変な声を出しながら余計に泣きはじめた。あら、今回は手強そうねー…。


「今日はボスに何て言われたのかしら?」


『…低脳、やっ役立たず…ぐすっ、目障り、だから、ひっ、ひっく…あ、ち行ってろっ……どかしゅううぅぅぅ……!!』


アタシの背中に腕を回して、強く強く隊服を握る。背中がシワになっちゃうわねぇなんて考えながら、なまえの背中をポンポンと叩く。なまえはアタシの肩に顎を乗っけたままわんわん泣く。顔は見えないけれど、きっとヒドイ顔してるんでしょうねぇ…レディが台なしだわ。

それにしてもボスったら、なまえに対してひど過ぎるわ!こうなったらボスに直接…!……は怖いから、後でスクアーロ辺りに相談してみましょ。


『うえぇえ…ぐすっ…。』


「泣かないのよ、なまえ。レディはいつでも、笑顔でいるものなのよ。」


『……え、がお…?』


「そうそう。笑っていればね、いつか絶対いいことあるの。神様は、明るくて頑張ってるなまえを見捨てたりしないわ。」


『…ひっ……ホントに…?』


「笑っていればね、泣き虫さん。」


アタシはゆっくりなまえを体から離し、涙でぐちゃぐちゃな瞼にキスを送る。今のは涙が止まる魔法なの、となまえに告げて。…アタシったら、いつの間にこんなことするようになっちゃったのかしら。

アタシの言葉が効いたのか、はたまた本当に魔法が効いたのか、なまえは徐々に泣き止みはじめた。袖でゴシゴシと目を擦り、真っ赤な目で、アタシにニコリと笑う。まだ目元が引き攣っているけど、「上出来よ」とアタシも笑う。
あぁもう、本当に可愛い。もしアタシが男のままだったら、確実にお持ち帰りしているわ。…お持ち帰りって言ってる時点でアウトね。

なまえはアタシに「ありがとう!」と言うともう一度抱き着く。今度は照れながらへへっと笑うと、再び廊下を走っていく。

小さな背中に手を振りながら、あっちはボスの部屋ねと遠くで考えていた。このやり取りでアタシの頭の大半を占めるのは、良からぬ気持ち。

ねぇなまえ、ボスじゃなくて、アタシじゃダメかしら…?…………なんてっ!この気持ちは、"また"さっさと掻き消して、スクアーロに告げ口でもしましょっ!











明るくさよなら







男に戻る気なんて、無いの








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これが……悲恋!?

書きながら気づくっていう。



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