ミール
待ち合わせは、道玄坂を一本裏に入ったエスパスの前。
何時に打ちやめをするかなんてその日によって違うので、早ければ夕方五時ぐらいには切り上げるし、長けりゃ閉店まで全ツッパ。俺が何時に連絡をしても、金曜日ならいつでも合わせるよと言った女とは三ヶ月前に知り合った。シンジュクで働いているごく普通のキャリアウーマンってやつで、なんでこんなアンダーグラウンドを拠点に日々資金集めをしている俺と知り合ったのかといえば、乱数に付き合って行ったバーがきっかけだ。
三ヶ月前の金曜日にバーで会って、一人姿勢良くカクテルを口にしている姿が視界に入って、釘付けになってしまった。所謂一目惚れというやつだけど、基本的にギャンブルを優先したい俺は少しいいなと思った女がいてもそれ以上踏み込まないように一定の距離を置いていた。
すり寄って来た女は程々に嗜む。奢ってもらい、対価にセックスをする。とびきり優しくしてやれば、次の日に起きて金を貸してくれと頼んでも、勝手に家を出て行ってその後にこの街で会ってもまた来てねと言われるぐらいだ。
痴情のもつれほどかいだるいものはない。そこには高揚するような駆け引きもスリルもない、ただただ大義な話がそこにあり、煩瑣な感情だとしか定義していない。だから一目見て本能的に気に入ってしまった女がいても、そこからの発展など望んではいなかった。
「オネーさん! 一緒に飲もーよー!」
「……うん、飲みましょっか!」
「悪ぃ、待ったか?」
「ううん、化粧品見たかったから丁度よかったよ」
後になって聞けば、今俺の隣で『今日はルナソルちゃんのアイシャドウをお迎えしましたぁ』と紙袋をごそごそしている彼女に乱数が声をかけたのは、俺があまりにも彼女を凝視していたので面白いことが起きそうという好奇心から来た結果らしい。
次の日の集まりで乱数が、その日の夜のことを幻太郎に哄笑しながら話すもんだから、幻太郎も幻太郎で大げさとも取れるぐらいにリアクションを俺にして見せた。とんだ悪趣味な奴らだと思量せずにはいられず、その日の集まりはひたすら俺をいじって終わりだ。打ち合わせなんて嘘ですよと幻太郎が言い出すので、こいつらとはやってられないと勢いよく乱数の事務所を出て五時間後。パンイチで二人のいる事務所へ戻ることになってしまったので、いよいよ二人は俺を噴飯しながら俺の周りをぐるぐる回り始めた。
「んで、今日はどうでしたか」
「よゆーよゆー! 十万勝ちだぜ!」
「借りたお金だけどってね」
「……まあいいじゃねーか! 今日はパーっと肉でも食いに行くぜ」
エスパスから出て特殊景品を金に変えれば、久々に俺の財布は潤った。今日はうっすいところを引いて、普段なら北斗の設定四は追う価値はねぇんだけどさと、独り言のような発言をしてもちゃんと拾ってくれる彼女は、三ヶ月前にバーで会ってからますます俺の目には煌びやかに見えてたまらなかった。
彼女は別段面白みのある生活をしているわけでもなく、平日は通勤ラッシュに揉まれ仕事をこなし、たまに残業をして今度は退勤ラッシュに揺られて駅から徒歩十分ちょっとのマンションに帰宅をし、家事をしてたまに飯を作ってのんびりして寝る。
そこから広がる話も特にないだろうに、俺は彼女の気を引くのに必死になっていたらしい。どんな仕事なのか、休みの日は何をしてるのか、どんな飯を作るのか。乱数が必死で笑いを堪えている一方で、俺は彼女の記憶にいかに止まるか、今までの経験をフルに思い起こしてなんとか今後も彼女と繋がれないか必死だった。君は何をしているのと聞かれた時に思わず口から人材派遣を……とポロっと嘘が出てしまった瞬間、いよいよ乱数がでかい口を開けて笑い、帝統はギャンブラーだよと万人ウケしない事実をバラし、そしていとも簡単に彼女に連絡先を強請ったのだ。俺の今までの時間はなんだったんだと呆然としていると、帝統くんも連絡先教えてと微笑んだあの日を、今も鮮明に覚えている。
「私の行きつけでいい?」
「どこでもいいし、今日のお代は任せてくれ!」
「ふふ、帝統くん私に奢ってもらうために毎週金曜誘ってくるんじゃないの?」
おっかしいとこちらを見て嬌笑する彼女の目が好きだった。化粧品が好きらしい彼女はいつも綺麗に目元を彩り、マスカラってのをしてるらしいけど、長いフサフサの睫毛がパチパチと上下し、涙袋が強調されるように笑った目元にいつも釘付けになった。笑う時に手で隠される唇も、いつも綺麗に色づいて艶があって、俺と会う前に塗り直してくれているんだなと思うとたまらない気持ちになった。
ただ、その気持ちと同じぐらい俺はギャンブルを愛して止まなかった。自分がクズで、所謂ダメ男というのは自覚していたが、まだ二十歳の俺は俺にも事情があるんだから仕方ねぇだろと開き直りだ。
何度も言うが、今はと言うか今後も俺は適当に女と遊び、ギャンブルのために生きて行くしギャンブルによって死んで行くもんだと思っている。ひどい言いようにも聞こえるかもしれないが、こんな俺に女を道連れにするつもりがないからだ。俺のことは一夜限りとか一時的な勘違いで片付けてほしいと何度も女たちには声を重ね、今じゃそれを言うことになんの抵抗も感じなくなった。むしろ、俺の自由を邪魔するぐらいなら最初から俺に慈悲を与えないでほしい。対価によって苦しい思いをさせる女の情緒に、俺は一切の責任を持てないからだ。
道玄坂を登り、ランブリングストリートを抜ける。左側にホテル街があり、ライブハウスが数件あるこの通りは行きづれの女とよく通る道だ。飯を食って、この道を通り、適当なホテルに入る。どの女もそうやって俺に寝場所を与えてくれていたので、自分が惹かれてしまっている女とこの道を通ることになるとは思ってもいなかったし、胸騒ぎがして通りたくなかったのが正直なところだ。
彼女とは、できれば長い付き合いをしたかった。だからこそ俺だけと仲良くしないで、乱数と幻太郎とも仲良くしてもらって、四人で楽しいことができるようになればいいなと思っているぐらいだ。そこに恋愛感情も持ち合わせず、誰も矢印を彼女に向けることなく、ただ友達として仲良く。Fling Posseとはまた別の仲良しチーム。乱数に彼女のことを言及された時に思わずこぼしたガキのような戯論を、乱数はまた笑い飛ばした。その後でにっこり笑って、そんなの無理だよと突っぱねたのだ。後ろで本を広げている幻太郎も、俺の戯言を聞いて辟易とした顔をして見せた。その後で、俺に一言浴びせてその話は終わりだ。欲張るなよと、ただ一言。
「乾杯〜」
カチンとジョッキがぶつかり、お互いそれを半分まで飲んでテーブルに置く。肉の焼ける音、匂い、脂が滴る様子。五感すべての神経を肉に注ぎ、いざ一口。めちゃくちゃ高いわけでもないけど、タンに力を入れているらしいこの店は金曜夜ともなれば活気付いて、オーダーが飛び交っていた。
「うんめぇー! 最高、悪魔的だ!」
「帝統くんがそう言うと、本当にカイジみたいだね」
小指で耳に髪をかける、隠れて見えなかったけどピアスをしているようだ。綺麗な濃いピンクと、少し緑の入った大理石チックな飾りがついたそれを凝視すれば、彼女はそれを外して見せた。
「帝統くんの目の色」
「!? あ、ぇ、そっそうだな! ……なんで?」
「デザインが可愛くて、色合いで迷ってた時に帝統くんから連絡きたから。思い出しちゃって、まあいいかなって」
少し恥ずかしそうに口角を上げて、下げた眉。吐きそうなほど嬉しいのにも関わらず、やはり胸元はざわざわと落ち着かなかった。まあ、胸なんだか、脳なんだか知ったこっちゃないしその所在はこの身体のどこにもないことは分かってはいたけれど。
一目惚れした女に毎週華金に会って、俺のために化粧をし直し、安くないだろうピアスの色合いを俺を思い出し購入し、それを指摘されると照れたように笑いながら一緒に飯を食う。こんなの、自惚れてしまって誰かが格好悪いと俺を指差すだろうか。どうせなら、そうやって実は俺以外にも援助してやっているダメ男がいて、そいつにも同じようなことをしていて欲しいと思うのは何故なのか。
こんなことをぐるぐると考え始めてしまい全く酔えなかった俺を差し置いて、目の前の彼女はそれはもう見事に酔っ払った。酔うと肌が赤くなるタイプらしいのであまり酒が強いわけではないのだろうが、気持ちよく酔っているみたいなのでまあいいとするか。
「おねーさーん、大丈夫ですかー」
「乱数ちゃんの真似〜? 似てなぁい!」
「いや真似してねぇよ! なんか口直ししてーな、つまみ系頼むな」
「好きにやっちゃってぇ〜!」
会話はできるけど、だいぶ陽気になってるなと思わず笑う。普段酒を飲んでも、こんなにふにゃふにゃになってしまう姿を見たことがないので、多少俺を信用してくれるようになったのかという安心感を得て、俺はホッとした。
その後はサラダだのチャンジャだの、適当につまめるもんを頼んで、俺は相変わらず酒を煽る。一方で彼女はソフトドリンクに切り替え、先ほどよりはいつもの調子を取り戻したようだ。
一週間分の仕事の愚痴だったり、こんなことがあってと言う取り留めのない話をしながら、返事をしてやる。終電前になると、これでまた一週間頑張れると伸びをしてお会計をする彼女をシブヤ駅まで見送って次の金曜をギャンブルをしながら待つ。それが俺のルーチンであり、俺らの解散の合図だった。
「おーい、お前終電やばいぞ」
「ぅう、ん……ねむい、し、ちょっと気持ち悪い」
「まじかよ、どっか休んで行……」
尻すぼんだ。それはつまり、この辺だとラブホテルで休んで行かないかと言っているようなもんで、休むなんて大義名分で多くの男はその先の行為に鼻の下を伸ばすわけだ。肩を抱いて足取りのおぼつかない女をいいことに、受付を終えたらベッドへ放り投げる。
そんなことを、彼女にしたいなんて一度も想像しなかった。無事に駅まで見送って、家に着いたの連絡を貰えりゃそれでよかったし、一線を越えるなんてこと今まで一ミリも考えやしなかった。考えたくなかった。
「おーい、どうするよ。俺家ねーから満喫に放り込むしか出来ねぇぞ」
「んー……」
ホテル、連れてって。あれだったら、帰って良いから。
彼女の腕を取れば、潤んだ瞳でそう告げられた。途端に胸が締め付けられて、上手く返事ができず、それでもなんとか帰してやれないかと悩んでいると、彼女の腕時計が終電を伝えた。
実際問題、満喫に放り込んだとして中で吐いてしまったら彼女自身もしんどいだろう。それに、H歴になってからこの街の男は女に対抗するようにのさばるようになった。ひとたび個室になってしまうそこは店だろうが、油断も隙もない。それなら一緒にホテルに入ってしまう方が賢明だった。
何をこんなに迷っているのか、俺にも分からなかった。こんなに好きで、傍に居たい女となら喜んでさっさと決断すべきことを忸怩する原因はなんなのか。どうしてさっき、俺を信用しここまで飲んでしまった彼女に対し安堵したのか、素直になってみれば、答えは明確だった。
好きになりたくなかった。好きになって欲しくなかった、それだけのことだ。
「おい、歩けるかよ」
「歩け、る。むしろちょっと、歩きたいかも」
フラフラとした足取りの彼女を支えながら、俺は意を決して適当なホテルを探した。まさか、彼女を置いて自分は乱数の事務所か幻太郎の家になんてことは、頭をよぎらなかった。
コンビニで水を購入し、なんて読むんだかわからないどっかの国の言葉の名前がついたホテルに入る。右も左もホテルが並んでいるが、ここは確か俺も入ったことがないところだ。顔もいまいち覚えていない他の女と入ったホテルを選ぶことは、気が引けた。
「ごめんねぇ、ほんと」
「別にいいけどよ、俺も今日はビジホに泊まるつもりだったし」
「ここラブホだけどね」
時間が時間だったのでグレードの高い部屋しか空いてなかったのは、勝った日とはいえ軍資金に響くので少々痛手だ。
意識のはっきりしてきた彼女を見て安心したおかげで、そもそも言い出しっぺはお前なんだから割り勘だかんななんて声をかければ、むしろ半分出してくれるのとベッドに横たわりながら悪態をつかれる。完全に彼女にペースを持っていかれているが、先ほどの苦しそうな様子を思い出すとこの際もうどうでもよかった。
「まーいいじゃねぇかよ、何するでもねぇしな」
「そう、ね」
元気よく当たり前でしょと声をかけてくると思っていたし、そう期待していたのに、なんだよその含みを持たせるような言い方は。はっきり線引きしてくれないと、俺ももうぐちゃぐちゃなんだよ。
窓もない薄暗い部屋。でかいベッドが鎮座し、豪華なアメニティ。風呂場にはマットがあって、テーブルにはコスプレ用品の冊子。それら全てが、俺の居場所が何をするための場所なのかを鮮明にさせた。一方で俺は、彼女に対しては手を束ね全快するまで見守るより仕方ない状態だ。
気休めに吸い始めたタバコも、残り三本程度しかない。これを吸い終えたら、俺らはどうなってしまうのか。
「帝統くん」
「なに」
「こっち、きて」
またドクンと心臓が跳ね上がる。ここで腰を上げなかったら、彼女はどう思うのだろうか。おとなしく傍に行ったらいいのか、それとも俺を信用しきっている彼女が賭けをしているのか。こんな居心地の悪いスリルはどうせなら味わいたくなかった、それも彼女によって。俺は恋愛関係のスリルだけは好まないし、忌避してきた。俺の知らないところで勝手に暴走した彼女への恋慕は、俺ですりゃ収集がつかない。
だから一生うまくいかない。この先他の女を好きになったとしても、後味の悪いスリルを食らうくらいなら、初めから回避してもっとギャンブルの方に俺自身を注いでいきたかった。目に見えない心と、脳が乖離してどっちに従えばいいかわからない。ああもう、俺まで吐きそうだ。
「変な顔しちゃって、どうしたの」
「考え事」
「珍しいねぇ」
もういい、もう面倒だ。こんな思いをするくらいならどうにでもなっちまえ。
乱数と幻太郎に甘っちょろい考え事を吐露した時に、彼女とみんなで仲良くするのは無理だと乱数に言われた。幻太郎には欲張るなと言われた。初めは意味が分からなかった。
好きになってしまった以上、終着点が存在する。大きな一つめの分岐は、友達から恋人に形を変えることだ。
それはきっと、誰かを好きになった時点で前提として置かれる事象だ。乱数は、俺が彼女を思慕していることにさっさと気づいていたから仲良しクラブになることは無理だと言ったのだろう。そして幻太郎は、友達と恋人を欲張るなと言いたかったのだろう、腹をくくれと。
「具合は?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
「そんで?」
随分意地悪な言い方をしたと思う、したいのかなんて。
瞠目をするでもなく、彼女は覆いかぶさる俺をただ見上げ、口を開こうとして閉じた。その顔の紅潮は、酒が抜けていないからでないのは明らかだった。
最後の最後まで、彼女は抗議しなかった。ああ、頼むから、俺と友達でいることを選んで欲しかった。お前のことなんて一生絶対仕合わせにさせてやれないのは分かっていたけれど、好きになっちまったもんは仕方ねぇし、甘い考えだけどお前が他の男と仕合わせになるまでは側に居させて欲しかった。
それももう、叶わないらしい。
彼女の綺麗な目元が好きだった。キラキラとしたアイシャドウはいつも白目に反射して、潤んだように見える瞳に長い睫毛。いつも艶やかで、ふっくらとした唇。どこのブランドだかも分からない、俺好みの香水。これで終わりなら、余すことなく俺のものにさせて欲しい。
歪な音を立ててきしむ。ベッドなんだか、別の何かだかはもう分からなかった。
噛みつくようにキスをして、舐め上げた唇は化粧品独特の味と酒の味がした。俺の舌を迎え入れた彼女は、俺の首に腕を回す。角度を変えて、確かめるように。犬歯を舌でなぞられ、離れた唇は俺のだか彼女のだか分からない唾液で濡れた。
丁寧に服を脱がし、やんわりと胸に触れればますます彼女の顔は紅潮した。交わす言葉は、特になかった。
暗い部屋、吸い殻と潰されたフィルターが一つ灰皿に転がって、三本を残して外身がくしゃくしゃになったタバコが放置されたその部屋で、響くのは聴くつもりもなかった愛した女の嬌声。味わうつもりのなかった、よがる彼女の肢体。いとも簡単にぐしゃぐしゃに皺をつけたシーツ。そして、泣いたばかりの痕が残る彼女の頬。
この際なら、全部この目に焼き付けておこう。
眠る彼女の頭を撫でると、少し身じろいだ。数秒後に瞼を持ち上げた彼女は、隣でタバコをふかす俺の右手に手を重ねる。
「好きになって、ごめん」
その一言に、何も返せなかった。次いで、苦しかったなぁと独りごちて、風呂へ向かった彼女は未だ裸の俺を差し置いて、さっさと髪を乾かして部屋を出る支度をした。
分かっていた。勘違いなんかじゃなく彼女が俺のことを好きなことに、気づいていたのに見て見ぬふりをしていたのは俺だ。
そうして、お互い何の覚悟も持ち合わせないまま、そんな準備もないまま互いにのめり込んでしまった。俺はギャンブルとチームを手放す覚悟なんて鼻っからなかったし、彼女も彼女で自分を仕合わせにしてくれる保証のない男にベットする勇気なんてこれっぽっちもなかった。それだけのことだ。
「始発で行くね」
「おう」
ヒールを履き、いつもの口紅をつけたのに、目元は風呂場で泣き腫らしたのか全く決まっていなかった。そんな彼女が、好きだった。
お互い、これで会うのは最後と踏んでいた。彼女は俺の唇に自分の唇を押し付け、テーブルに万札を一枚置いた後で俺の顔をまじまじと見つめて頭を撫でて、いよいよ背を向けこの部屋を出て行った。
弁解する必要なんてなかった。俺は一度も彼女に好きだと一言も伝えてこなかった。それを伝えていたら、彼女は必死で俺の腕に縋り付いたのだろうか。俺の覚悟が決まるまで、寄り添ったのだろうか。そうして、一度も好意を明らかにしてくれなかったから自分の片思いで終わったと、部屋を後にした彼女は思ったのだろうか。
最後の一本を吸ったら、俺も風呂に入ってこの部屋を出よう。そして今日からも今までと変わりなく、ギャンブルを愛しあいつらに振り回されるだけだ。
窓のないこの部屋は、非日常的だった。だから今日起きたことも、きっといつか忘れるのだろう。ああ、人の気も知らねぇ女。
ワードパレットより
指定単語 待ち合わせ、睫毛、きしむ
(200219)