「初恋とか意外だね」
「え?意外なの?」
「名前ちゃんって、彼氏いそうだもん」
「嘘だ。友達は彼氏いないの?」
「いるよ、社会人なんだー」

友達の友達とお話をしていた。相手は言っていないけど、初めて恋をした。ということを伝えると友達はびっくりしていた。今はそれよりも、友達の彼氏が社会人なんて初めて知った。彼氏のことを幸せそうに話す友達は恋する女の子って顔でとても可愛くて魅力的だった。

「名前ちゃん、応援してるからね」
「うん、ありがとう」
「そういえば知ってる?」
「え?何が」
「今日、新しい生物の先生来たらしいんだ。凄く綺麗な人なんだって」
「へぇー」

綺麗な人って女の人かな?そうだったらなんか不安。先生に色仕掛けとかして、先生を食べるような人だったらどうしよう。考えるだけで気分が悪くなって来た。

「6限目、生物だからちょっと楽しみだね」

友達がそう言ったのを聞いて、ますます気分が悪くなった。タイミング良くお昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。5限目は数学、とりあえず頑張らなきゃ。

―――つ、ついに来てしまった6限目。どのくらい綺麗な人なんだろう、緊張して瞬きばかりしていた。お腹も痛くなって来るし、わたしはどれだけ気にしているんだろう。もう、言葉では言い表せない。授業始まりの予鈴が鳴って、約10分後息を切らした、先生が現われた。

「――なんだ、男じゃないか」

確かに綺麗な人。長くて綺麗な髪(ちょっと個性的な部分もあるけど)、赤と藍色の目。調った顔立ち。本当に綺麗で、羨ましいと思った。先生が男の人だと改めて実感するとわたしはとても脱力した。

「遅刻してすいません。ちょっと色々ありまして。僕は六道骸です」

変な名前だけど似合ってるような気がした。先生はキョロキョロと教室を見回すと「いました、いました」と上機嫌な感じで誰かに近付いて行った。

「君が、名字さんですか」
「……は、?」
「いえいえ、なんでもないです。こっちの話」

くふふ、と笑って教壇に戻る先生。わたしは女子生徒の視線を一気に掻き集めた。もちろん、悪い意味で。

「さて、皆さん授業始めますよ」

ぱん、と手を叩いて先生は仕切り直した。先生の描く生物の図は、なんとも言えないくらい個性的(下手)だった。みんなその図を見て何も言わなかったものの、ずっと教科書を見ていた。それ以外はわかりやすくて良いけど。でも、やっぱりどんなに綺麗な人でも、わたしの中の一番は雲雀先生でしかないのです




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2009.0927.雫
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