恋をしたら女の子は変わるもの、自分にあまり関心を持たないわたしでも、気にするようになった。どうしたら先生に気付いてもらえるかな、どうしたら先生の好みの女の子になるのかな、なんて考えていた。もしかしたら先生に彼女とかいるかもしれないのに。そう思っても、わたしは自分のことでいっぱいだった。

今日は1限目から古典なので、わたしは少し早く学校に行って予習をしてみることにした。学校に着いたのはいいものの、少し早過ぎた。クラスの人は誰も来ていなく、教室にはわたししかいなかった。気を取り直して、古典の予習をしようと試みた。
いかでとく京へもがな。いかでの意味は、なんとかして、とくは早く。合わせると、なんとかして早く。…もがなの意味は何だっけ?昨日確かやったはずなのに、忘れた。

「そこの意味は願望。昨日教えただろ?だからそこの訳は、“なんとかして早く帰りたいものだ”ってなるの、わかった?」
「せ、んせい」
「わかった?」
「…は、はい。ありがとうございます」

目を見て御礼が言えない。だって、わからなくて悩んでいたら、いきなり先生が現われて、わたしに答えを教えてくれたんだから。先生は、ふっと笑って、わたしに言った。
「僕、努力する人は嫌いじゃないよ

しばらく開いた口がふさがらなかった。ずっとぼうっとしていると先生は困ったように笑って「じゃあ、HRでね、名字さん」と言って教室を出て行った。先生がわたしの名前覚えててくれた、そんな些細なことでも嬉しくて、嬉しくて、泣いてしまいそうだった。




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2009.0924.雫
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