ついにわたしは先生にこの間の事の真相を聞こうと応接室の前まで来ていた。そのついで、という訳ではないけれど獄寺先生とわたしがキスしてしまった事も話そうと思っている。わたしは大きな深呼吸をひとつ吐いて、応接室のドアを2回ノックした。「どうぞ」と中から言われたので、わたしは恐る恐る応接室へと入った。

「突然すいません」
「…別にかまわないよ。でも今日は僕用事があるからなるべく手短にね」

先生の声色はやけに落ち着いていて、怒っているという感じはしなかった。だけども、どこかよそよそしくて、いつもわたしに接しているような態度ではなかった。

「この間わたしが恭弥からのキスを拒んだのには理由があるのです」
「……」
「わたし見ちゃったんです、コンビニできれいな女の人と恭弥がキスしてるの。恭弥が嫌がる素振りを見せたなら許そうと思ったんです。だけど、嫌がりもせずに受け入れていたからショックで」
「…そう」

先生は弁解をしなかった。わたしは「ちがうよ…」「そうじゃないんだ」とかせめて嘘でもいいから言って欲しかったのに。先生はわたしの話をただ聞いているだけだった。

「わたし、恭弥に隠し事をしてたんです」
「どんな?」
「…わたし、獄寺先生とキスしちゃったんです。いきなり『俺と付き合って』とか言われてそのままちゅっと。ごめんなさい。油断しすぎてたのはわかってます。だけどわたしが好きなのは恭弥だけです!」
「そうなんだ」

意を決して言ったのに、先生の反応はとても薄かった。いつもの先生なら「咬み殺す」とか言って怒るのに。おかしい、先生はどこか変だ。

「名前、すまないけど僕これから用事があるから」
「…え?」

わたしが疑問の声をあげた途端、先生のケータイが鳴った。

「もしもし。ああ、今から向かうよ。用事?今終わった。…はいはい、…準備してなよ」

柔らかい笑みを浮かべた先生に疑問を持った。なんか凄い嫌な予感がして、わたしは思わず聞いてしまう。

「今の電話の人って、コンビニであった人?」
「……気をつけて帰りなよ」
「恭弥?…教えてよっ…お願いっ…」

先生は何も言わずに、応接室を出て行った。


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