わたしが高校2年生に上がった時、担任の先生が変わった。最初はどうでもよかった。どうせ中年のおじさんだろうし、と思ったから興味なんて示さなかった。

「名前は雲雀恭弥、みんなには古典を教えます」

わたしは先生を見た瞬間、体にびりびりと電気が走る。な、にこれ。先生から目が離せない。心臓がうるさい、どくんどくんと波打っている。偶然先生と目が合った。…口から心臓が出そうになった。

「至らないところもあるけどよろしくね」

先生はそう言って教室を出て行った。先生が出て行った後の教室の騒がしさは凄くて、みんな先生の話題で持ち切りだった。そりゃ、そうだろう。あまりそういうのに興味が無いわたしだって、先生のことでいっぱいなんだから。


―――今日の3限目は先生の古典の授業だ。わたしは自然と髪を整えたりしていた。ガラッと教室のドアを開けて、入って来た先生を見て、わたしの胸は高鳴る。

「出席を取ります」

次々と先生はクラスメートの名前を言う。先生に名前を呼ばれるって考えただけで、どきどきする。こんなの、わたしらしくないってわかってるのに。

「名字名前さん」
「は、はいっ」

う…わ、死ぬかと思った。あの綺麗な声で名前を呼ばれたんだ、と思うと凄く幸せだった。我ながらめでたい奴だとは思ったけど…。

「――で、ここは終助詞であって、意味は…じゃあ、名字さん、答えて」
「…はい、えっと」

パラパラと文法書を開いて意味を探す。ここで答えられなかったら、先生に嫌われてしまう。そう考えてしまうと、緊張して、ページをめくるのでさえ難しく感じた。

「はぁ…これくらいもわからないなら、もう1回1年生やり直したら?」
「……うぅ」
「この終助詞の意味は願望、わかった?」
「はい、」

最悪としか言い様がない。先生からしたら、わたしの第一印象は頭の悪い子になってるかも知れない。そんなの、いやだ。絶対に嫌だ。わたしの頭を今日ほど呪ったことはない。
授業が終わりみんなは少しだけほっとした表情を見せた。理由は、先生の授業はわかりやすいけれど、凄く厳しい。授業中少しでもざわついたら、うるさい、喋るな。終いには「次うるさくしたら、咬み殺す」と生徒を脅した。先生がわたしに言った台詞まだまだ序の口みたいだった。先生が怖い人だと知っていても、わたしの鼓動は鳴り止まない。



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2009.0924.雫

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