教育実習生の獄寺先生と会った次の日の今日、全校集会があった。体育館に向かい、少し長めの校長先生の話が終わった後、教育実習生が校長先生によって紹介された。一人目は昨日会った獄寺先生で、二人目は体育を担当する山本先生で、三人目は家庭科を担当する笹川先生。獄寺先生と山本先生は女子から黄色い声を浴びていた。笹川先生の方は男子から、人気があるみたいで男子がよっしゃ、とか言っていた。なんかこんなにかっこいい先生や、可愛い先生が来ると逆に怖いと思う。

教室に戻ると、女子たちの興奮が収まらないのか「やばい」と女子たちは連呼する。まあ、確かにあれはやばい。レベルが違いすぎると思う。クラスの男子と比べたら、月とすっぽんだ。…あ、早く準備しなきゃ。1限目は…古典だ。今は気にしちゃだめだよね、うんうん。わたしは自分を納得させて、授業の準備をした。

「ここで使われている『しむ』はどういう意味でしょうか?佐藤さん、答えなさい」

先生に当てられた佐藤さんは、たどたどしい感じで「し、使役です」と答えた。すると先生は満足そうに「正解です」と言った。いいなあ、わたしも先生に当てて欲しいのに。そう思ったのだけど、願いは叶わず古典の授業は終わってしまった。


お昼休み、友達とお弁当を食べ終えた後、ひとりで屋上へと向かった。あれだけテストに自信があったのに、こんな結果だと、結構堪える。フェンスに寄り掛かり、空を見上げていると「よお」と聞き覚えのある声が聞こえた。

「あ、獄寺先生。昨日ぶりですね」
「そうだな」
「…煙草ですか」
「ん?ああ。中学の時からやめられなくってな」
「ちゃんと灰皿持ってるんですね」
「そりゃあな」

獄寺先生は煙草を吸いながら、ネクタイをぐっと緩めた。こんな獄寺先生の姿、他の先生に見つかったら、相当おこられるだろうな。「まだ元気ねえのか」獄寺先生は昨日みたいに、わたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。ときめいたりとかはしないけど、獄寺先生はとてもいい人なんだなと思った。

「なんか、ありがとうございます」
わたしがお礼を言うと、獄寺先生は「何も礼をされるようなことはしてねえよ」と笑った。


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