まだ、空が薄暗いようなこの時間。運動部は眠たい目を擦りながら起き、或いは家を出るようなこの時間。とても運動部には見えない風貌の少女が、眠たい目を擦り欠伸を必死に噛み殺しながらとある家の前で立っていた。端から見たら不審者に見えるその風景も近所の人間から見たら当たり前に近い光景で。少し違うのは朝早く、という点だけだろう。
「いってきまーす」
『亮ちゃ!』
「!?…なまえ!?」
『おはよう!』
「はよ。こんな朝早くどうしたんだよ?」
『今日、亮ちゃんの誕生日だから朝一番にお祝いしたくて来た!誕生日おめでとう!!』
「っ、サンキュ」
『驚いた?』
「おう」
少しばかり照れたような笑みを浮かべ、帽子を触ればそれが照れていると理解している彼女は良かった、と小さく呟き笑った。
「つーか前もって言ってくれてれば起こしにいってやったのに。お前、朝苦手だろ」
『え!だってそれじゃ意味ないじゃん!誕生日ってサプライズだからこそ嬉しくなるでしょ?』
「あー、まあな」
『ほらー』
「けど俺はなまえが祝ってくれんならサプライズでもそうじゃなくても嬉しいけどな!」
『え、何それ亮ちゃんってばかっこいい』
「はぁ?」
『でもそうやって言ってくれると凄く嬉しい。私も亮ちゃんからならなんだって嬉しくなるよ!だから亮ちゃんに例え彼女が出来てもお祝いさせてね?』
「当たりめーだ。なまえは家族みたいに特別だからな!」
『私も!亮ちゃんは特別!ずっとずっと特別!大好き!』
「なっ、おまっ、激ダサ…」
ニコリ、と悪戯っ子のような笑みを浮かべ彼を見やれば彼は赤面し外方を向いてしまったが、後に困ったように笑ながらも小さく呟いた、ありがとうと。
Happybirthday Ryo.S
15/9/29