指先の甘い秘密
ザンザスの部屋に入ると、ソファの上で小さな身体を丸めて、こっくりこっくりと船を漕いでいる隻眼の少女が視界に入った。
危なげに揺らぐ少女を抱き寄せながら自分もソファへと腰掛けて痩せ猫のような柔身を膝の上に座らせてみる。
「………ざん、ざ、す?」
とろんとした瞳で此方(こちら)を瞬き見て、すぐにふにゃっと身体の芯を緩めて胸もとへと倒れこんできた。
「ざ、ん、ざす………」
寝惚けて、さらに甘ったるくなった声で、その名を呼ぶ。
「――――寝てろ」
「………う、ん」
こっくりと小さく頷くと、そのまま薄らと赤い頬を此方の身にぴったりとつけ、やがて穏やかな寝息をたてはじめる。
ソファに背を預けながら、ちっぽけな頭を撫ぜると少女のぽってりとした蕾のような唇がほんのりと咲いた。
愛くるしい笑みをこぼして、頼りない力でシャツを精一杯に掴んでくる。
此方の身体へ溶け込もうとするかのように丸くなる少女の柔身を抱きしめた。
ドアが開く音がしたが、構わずに腕の中で眠っている少女の香りよいしっとりとした髪に唇を寄せて口付けをする。
「てめえ、なにしてやがるっ」
床を踏む踵音が止まると怒りを押し殺した低重の声が響いた。
視線だけを上げると、顔を盛大に顰めたザンザスが此方を射殺すかのように睨んでいる。
U世は両端を吊り上げた唇に人さし指を当ててみせた。
2011.4.12
リクエスト企画で書きました文に冬杏さんが漫画を描いてくださいました☆
ザン髑セコというかセコ髑ザン☆
※title 影
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