いちばん星


眼前でぼんやりと立っていた吹けば飛ぶような身体を引っ張り上げると膝へとすわらせた、いつものように――――――――。
細い腰を抱き寄せて白く柔いうなじに鼻先を埋める。
女の匂いに満ちていない甘酸っぱい肌を嗅ぐ。
腕の中に捕らえた小さな身体が身動ぎするたび、しっとりとした襟足がザンザスの頬をくすぐる。

「ザンザス………?」

動くのを諦めるとクロームはか細い声を出して振り返ってきた。
鈴をはったようなつぶらな瞳でザンザスを凝っと見つめてくる。

「なんだ?」

少しだけ腕の力を緩めるとザンザスはクロームのあどけない顔を見下ろした。

「…………ザンザスは、幸せって、思うこと……ある?」

ザンザスは言動の前後に無関係で突拍子もないことを尋ねてきたクロームをまじまじと見下ろした。

「………幸せ?」
「た、楽しいこと、とか、好きなこと…」

ザンザスの膝の上で身体を縮めるとクロームは頬を桜色に染めて少し焦り気味に呟く。

「楽しいこと、好きなこと?」

ザンザスはクロームの言葉をゆっくりとなぞっていく。

「そう。………好き………な、こ………と………」

黙ったままでいるとクロームの質問は尻すぼみになり消えてしまう。
眉をハの字にして腕の中で縮まっているクロームの形の良い小さな頭を撫でる。

「………ザンザス?」

シルクのような肌触りがする薄紅の頬を撫で擦ると指先で軽く突く。
ふにゅとしたなんともいえないクロームの柔らかさが指先からつたわってくる。

「………ザンザス?」

クロームは困った表情をして、いっそう頬を赤くした。





原案・冬杏 文・さるこ
冬杏さんのツイートから広がりましたお話。
2012.4.17
2013.1.10 サイトup



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