くんっとズボンの裾を引っ張られ、首を傾げながら下を向く。
そこには小さな緑の姿に金の瞳。

「あっれ、どしたのトンベリちゃん。クラサメさんとはぐれた?」

此処に来たときには既に彼の気配は感じなかった。
こくりと頷いたトンベリを片手で抱え上げ、っいしょっと、と腰掛けていた椅子から立ち上がる。読もうとしていた本を元の棚に戻して、しゅんと落ち込んだ様子のトンベリの頭を撫でながらクリスタリウムの扉へと歩み寄る。
この時間なら0組の教室かなぁとぼんやり思いつつ、観音開きの扉を開ければ今まさに反対側から扉を開けようとしていた女の子がバランスを崩してキリアの胸元へと倒れ込む。

「だ、大丈夫? ってトンベリ包丁しまってた!?」

突然の事態に驚きながら問うた質問にトンベリは慌てた様子で首を縦に振る。
参事に至ることはないとキリアはほっと胸を撫で下ろし、胸元へと視線をおろす。

「いったた…ん?トンベリ?」

眼前にあるであろう緑を見て、彼女は体勢を起こすのも忘れて不思議そうに瞳を瞬く。

「隊長以外に懐いてんの初めて見た…」

ポツリと零れた言葉にキリアはふっと彼女の纏うマントに視線を落とす。朱。
朱雀の、色。

「ねぇ」
「えっ、あっ!わわわ悪い!」

そういえば倒れ込んできた姿勢のままだったっけ、とさして気にしてもいない体でキリアは笑って慌てふためく銀糸の髪を撫でる。
びっくりしたのか後ろに飛び退いた彼女にも一つ人の好い笑顔を上乗せてキリアは至極自然に口を開く。

「クラサメ士官、今教室にいる?」
「え?あ、ああ。いるよ」
「そっかサンキュ!」

おまけにまた笑みを浮かべてキリアは微妙に開いた扉を開けて彼女の進路から身体をそらす。
邪魔してごめんな、と固まるその姿の横を通り過ぎる途中に声掛けてキリアはそのまま0組の教室へと足を進める。腕の中で嬉しそうに小さな手をパタパタさせるトンベリを眺めてキリアもまた、ただ、今度は少し違った意味で笑みを零す。
さっきの子可愛かったなぁ、と胸中で呟いては緩みかけた頬を口角をあげて引き戻す。そんな彼の背を普段らしくないぼんやりとした視線で、彼女がしばし眺めていた事をキリアは知るわけもなく。ほんの少し呼吸を整えて、瞬く間に己が所属する組の存在を揺るがしたその扉をノックした。



迷い子の連れてきたものは



(失礼しまーす)
(キリアか、久しぶりだな)
(そーだっけ?指令室とかでちょいちょい見かけてるからそんな気しないんだけど。
 あ、クラサメさん迷子のお届け)
(……すまん)
(いやまぁ謝るのはトンベリちゃんに、ね?それより銀髪の前髪長い子の名前教えてよ)
(…サイスの事か?どうしたんだ急に)
(いや、まぁその、ねー)



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