「え、もう年明けたの?」

それが彼女の年明け第一声。予測が出来るというか、此処に来てから毎度の事過ぎて。今年もか、という表情でエドガーは苦笑した。

「だから時計とカレンダーを見ろ、といつも言ってるじゃないか」
「って言われても…」

日付も曜日も朝晩の感覚も集中すると無くなるからなぁと眉間に皺を寄せてアルトは唸る。あらゆる事が目まぐるしく過ぎ去っても彼女のスタンスは全く変わらず、唯一と言うべき変化は表向き少し淑やかになったくらいだろうか。ほら、とエドガーが差し出した手をとって立ち上がったアルトは作業着に付いた埃をはらって一つ溜め息を吐く。落胆を顕著にした肩が揺れるのに従って瞳と同じ翡翠色のリボンで括られた伸びた茶色の髪が揺れ、目を細めたエドガーがその毛先をそっと手に取った。

「エド、ガー」
「ん?」
「なにしてんの」

くすぐったい、と形のいい唇にあてられた髪を首を動かして逃したアルトは文句を言いたげにエドガーを睨む。わがままを聞いて貰っているものだから下手な事が言えなくて口を噤む彼女の頭を撫でて、くすくすと楽しそうにエドガーは笑う。

「ばあやが待ってる」
「うげ、また厚化粧…」
「隈が見えているよりは、流石になぁ」
「わーってます…」

新年のスピーチが5分超えたら絶対老けたって言ってやる、と決意露わに呟くアルトにエドガーは双子が考える暇をくれなかったからなぁとしたり顔で返す。それを聞いてアルトは三度溜め息を吐く。もうわがまま言うの止めようかなぁでもなぁとぶつぶつ繰り返す彼女をひょいと抱え上げて、エドガーは足早に階段を駆け上がる。ちょっと!と喚く声を聞き流して、今年も良い年になりそうだと彼は笑うのだった。



―――――
謹賀新年。
相変わらず連載後を書くのが好きなようですが今年もよろしくお願い申し上げます。

2013.1.1 風見星 拝






※ブラウザバックでお戻り下さい
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -