「あ、阿部の馬鹿!一応彼女の私よりそんなに廉くんのことが好きかコノヤロー!!」
「はぁっ!?」

ざわついていた教室が、コイツのせいで一瞬で静まり返った。
いまやオレとコイツはクラス全員の視線に晒されていて、
今まで話し合いをしていた花井と栄口(と傍で話し合いを聞いていただけの水谷)もぽかんとした表情でコッチを見ていて、
そしてこの状況の原因であるオレの彼女は言いたいことをいってスッキリした表情をしていた。

「ちょ、おい、今のどーゆー意味だ」
「意味、って。そのままの意味だよ。阿部はいっつもいっつも廉くんのことばっかなんだもん」
「いつ?」
「この前だって一緒に帰ってたのにずっと廉くんが練習で転んでてあいつ何してんだとか、
あの馬鹿指示した以上の球数投げてたとかそんなのばっか話してた!
帰るまでに13回も名前が出た!私なんて3回だったのに!!」

言ってる途中でテンションが上がってきたのか、最後なんてほぼ叫び声で耳が痛くなる。

「か、数えたんだ」
「数えたよ! やっぱり阿部は私より廉くんを愛してるんだよねだってそうじゃなきゃこんな数になるわけ無いもん。
うわーん、栄口君どうしよう私ふられちゃったよ!」
「あ、じゃあオレの彼女に…」
「やだ」
「あ、そうですか」

横で繰り広げられている会話に耳だけでなく頭も痛くなってきた。(とりあえずクソレ死ね)
どうやってコイツの甚だしい勘違い(というかなんでオレが三橋を愛さなきゃいけねぇんだ気持ち悪ぃ)をとこうかと悩んでいると花井と目が合う。

「阿部、大変なんだな」
「そう思うならあいつ等をどうにかしてくれ」
「オレには無理だ」



(Least said, soonest mended.)(もう絶対コイツの前で三橋の話はしねぇ)