「わぷっ…」
「のわっ!」

トン、と軽い音がしてすぐにバサバサと大量の紙が落ちる音がした。
ふと気が付いたときにはもう遅くて、大切な書類の束は床に散らばってしまっていた。

「わわっ、書類が」

急いでしゃがみこんで、散らばった書類をかき集める。
少し遠くに散らばってしまった書類を拾い上げようとして手を伸ばしたとき、
私の手よりも速く、他の誰かの手が、ひょいとその書類を拾い上げた。
差し出された書類を持つ手を辿って目線をあげると、にこにことした太陽のような笑顔が目に入って、おもわず目を細めてしまう。

「あ…」
「はい、これも落ちてたさ」
「あ、あの、ありがとう」

ラビ君が差し出した書類を受け取って、腕の中に集めた書類に重ねる。

「それ、順番バラバラだけど、コムイに怒られたりしねぇさ?」
「え、あ…そ、そうだね。順番、ちゃんとしなくちゃ」

ラビ君に言われて、私は腕の中の資料のページをそろえようとした。

「えと、これが6ページだから……これが、こっちで……あれ…?」

資料を床に広げて、ページ数を確認して並べ替えるけれど、
ラビ君に見られていると思うとなかなか手が思うように動いてくれない。
ブツブツと呟きながら、資料を弄っている私があまりにも滑稽だったのかどうかはわからないけれど、ラビ君はクツクツと笑い出した。
恥ずかしさで顔が赤くなって、早くどこかに行って、と願ったときに、ラビ君が私の前にしゃがみこんだ。

「ぶつかったのはオレのほうだし、手伝うさ」
「でも、悪いよ。ぶつかったのは、わ、私が前を見なかったせいだし…」
「んー…でもオレだって前見てなかったわけだし、お互い様ってコトで」

にかっ、と笑ってラビ君は書類の束に手を伸ばす。
私は何もしないまま、ラビ君はさっさと書類をそろえてしまった。

「ほい、終わったさ」

2度目に差し出されたラビ君の手から書類を受け取ろうとして、私の手がラビ君の手に少し、触れた。
途端に恥ずかしさで顔がカァッと赤くなって、私はラビ君の手から書類をもぎとると、

「あのっ、ありがとうっ」

と言って、ラビ君の顔も見ずに走り抜けた。

そのまま振り返らずに走り抜けて、科学班に着くと、バン、と室長の机の上に書類を押し付けた。

「頼まれてた、書類、どうぞっ」
「うん、ご苦労さま。ところで名前ちゃん、顔赤いけど大丈夫?」
「…っ、大丈夫ですっ!」

俯いてそう答えると、そのまま科学班にある私の机の椅子に座り込む。
頬を両手で挟みこんでみると、確かに熱を持っていて。
もしかしたら、ラビ君に、赤くなった顔を見られてしまったかもしれない。と考えると恥ずかしさが倍増した。
あぁ、もう、どうしたらいいんだろう。明日から、今以上にラビ君の顔を見れなくなってしまう。

願わくは、ラビ君に私の思いがバレていませんように。

火照った頬を冷やしながら、私はそう思った。



(Prima amore di una ragazza)