よく、人を表現するときに心がきれいだとかなんだとか言うけど、
その「きれい」という言葉は一体どこから出てくるんだろうと不思議に思う。
それを見たことがないのに、きれいだなんてどうしていえるんだろう。

「了君、どうしたの?」

名前がそう言ってボクの顔を覗き込んできた。
心配そうな顔の名前に、笑顔で「なんでもないよ」と返す。
「ふーん…?」と呟いた名前は、じっとボクの目をみつめてきた。
名前の水晶玉のようにきらきらとした目の中に、ボクの姿が映る。
ふいに、名前にはボクがどんな風に見えるのか気になった。

「名前」
「なあに?」
「名前には、ボクがどう見える?」
「どう見えるって、了君の言いたいことがよく分からないんだけど…」
「だから、雰囲気とか空気とか、そういうののことだよ」
「えー、難しいこと聞くなぁ…」

ボクの問いに名前は腕を組んで考え込んでしまう。

「うーん……正直、まだ分からないかなー」
「分からない?」
「うん。だって私はまだ了君のことをちゃんと知ってるわけじゃないからね」

そして、名前は少し頬を赤らめて「でも、私はもっと了君のこと知りたいって思ってるよ」と続けた。
はにかんだ笑顔を浮かべる名前はすごく可愛くて綺麗だ。
だからきっと、名前の心もすごくきれいなんだろう。
そう思うと、それを確認したくて堪らなくなってきた。

「ボクも、名前のことをもっと知りたいって思うな」
「…本当に?」
「うん」
「嬉しい!」

そう言って、蕩ける様な笑みを浮かべた名前は、ぎゅっとボクに抱きついてくる。
そっか、ボクが名前のことを知りたいって思うのは名前にとっても嬉しいことなんだ。

…なら、確かめたって構わないよね?

ボクは名前の華奢な背中に腕を回しながら、右手に持った鋏を強く握り締めた。



(君の心は何色かな)

(だって、すっごく気になるんだ)(君だって、嬉しいんだろう?)