あれもいらない、これもいらない。目についたものを片っ端から捨てていく。あっちは似合わないし、こっちは相応しくない。ゴミ箱じゃ足りなくなって、大きなゴミ袋の中にそのままぽいぽい投げ込んだ。部屋を見回してみれば捨てなきゃいけないものばっかりで、ちょっとだけ気が遠くなった、けど、これはぼくが頑張らなくっちゃ。いつもはこういう面倒なこと、全部ノボリにやってもらってるんだけど、さすがにこれはノボリに丸投げするわけにはいかないもんね。
…それにしても捨てるものたくさん、今日中に終わるかな、なんて不安になったけど、うん、ぼく、頑張る!気合を入れて、また作業を再開。なんでこんないらないものばっかりなんだろ、流石にうんざりしながら新しいゴミ袋を取り出した。

全て片付いたころにはきれいさっぱり。ほぼ何もなくなってしまった。すっからかんの部屋。ここで生活するわけにはいかないから、今度はここにぼく好みの家具をそろえていく。勿論基調になるのはぼくの大好きな白色!アイアントよろしく地道に家具を運んでたら、近所のおばちゃんに「お引越し?」って聞かれちゃった。「ううん、模様替え!」って元気よく答えたら、大変ねぇって笑って、頑張ってねって飴をくれた。ここ、良い人ばっかりでほんとにいい所!貰った飴を舐めながらにこにこ上機嫌で、残った家具を運び込んだ。昨日徹夜で考えた通りに配置したら、前よりもすごくいい部屋になった、と、思う!きっと名前も喜んでくれるよね。その瞬間を想像すると、わくわくしてきて、ああもう早く帰ってこないかなぁ!って言った瞬間、ガチャって玄関のドアが開く音がした。なにこれすっごいタイミング、もう運命としか思えないよね。玄関で茫然と立ち尽くす名前を笑顔で迎えた。

お帰り名前、吃驚した?どうかなこの部屋ぼくの趣味だけどでも前の部屋よりこっちのほうがずっと名前には似合ってると思うんだだからぼく頑張ったんだよねえ褒めて褒めて!…なあに名前どうして泣いてるの?あっ、そっか泣くほど嬉しいんだね!名前に喜んでもらえてぼくも嬉しい!



(善意の暴走)
(「あなたはだあれ」と、零れ落ちたそれが拾われることもなく)