「ねーリュウタ。足、しびれてきたんだけど」
「動いちゃダメー」
「…むぅ」

ひざの上で、猫のようにゴロゴロと甘えるリュウタロスの頭を撫でながら、名前は不満の声を上げた。
夕方ごろにデンライナーを訪れて、かれこれ1時間ほど。
その間ずっとリュウタロスに膝枕をしているせいで、足の感覚は大分なくなってきているし、
なによりリュウタロスのトゲみたいなのものがちくちく突き刺さってきて、かなり痛い。
遠まわしに、そろそろやめようと言ってみるものの、リュウタロス相手にそれは通じなかったようだ。
ひざにリュウタロスの頭がある以上、無理に動くことも出来ない。

「私、暇だよ?」
「僕は楽しいー」
「あ、そう……」

この自己中大魔神め、と心の中でつぶやく。
手持ち無沙汰に、ふと腕時計を見るともう6時を回っていた。
もうそろそろ帰らないといけな、でも帰るにはリュウタロスをどうにかしないと。
どうしよう、と名前が悩んでいると、名前の様子から何かを感じ取ったらしいリュウタロスが膝枕をされた状態のままで腰に抱きついてきた。

「リュウタ? どうしたの?」
「…帰っちゃヤダ」
「ワガママ言わないで、私だって帰らないと、心配させちゃうし」
「……帰っちゃ、ヤダ」
「リュウタ……?」

いつもと違うリュウタロスの態度に、名前が不安そうな声を出す。

「名前、帰らないで…」
「ね、ほんとにどうしたの?」
「名前が帰ったら、ボク、独りになっちゃう」
「モモもウラもキンちゃんもナオミさんもハナさんもいるでしょ?」
「名前じゃなきゃ、ダメ」

ぎゅう、と痛いくらいにリュウタロスに抱きつかれて、名前はいたたまれない気分になった。
体格だけみるなら大人でも、リュウタロスはまだまだ精神的に子供だ。

「最近、名前ずっと来てくれないし。来ても、すぐ帰っちゃうし」
「…うん」
「僕、すっごく寂しかったんだよ」
「リュウタ、ごめんね」

いくら忙しかったとはいえ、甘えん坊のリュウタロスをずっと放置していたことに罪悪感が沸く。
謝りながら、頭を撫でると満足げな声で「いいよ。名前だから、許してあげる」と言うリュウタロス。

「今日は、もう、帰らないといけないけど。明日は朝から来るから、いっしょに遊ぼう?」
「ほんと!?」

がばっ、と起き上がるリュウタロス。目がキラキラと輝いている。

「うん、ほんと。私から良太郎にお願いして身体を貸してもらうから、外でも遊べるよ」
「じゃあ公園に行こ! 名前に見せたい猫がいるんだ!!」
「見せたい猫?」
「そう! すっごく可愛いんだよ」

今までの雰囲気から一変して、とても楽しそうなリュウタロスがいとおしくて、思わず名前はリュウタロスを抱きしめた。



(せつなくて、あたたかい)(その体温を、感じていたい)