大事にしたいんだよ、だから

数日前に彼女がいなくなった。
うん、この場合逃げられたが正しい。
現に彼女は隣にいないのだから。

『 俺の何が駄目だったんだろ~ 』
「 はぁ? 」
『 俺さ、容姿端麗頭脳明晰運動神経抜群じゃん? なのに何が駄目だったんだろ 』
「 その性格だろ 」
『 何かボーグ俺に当たり強くない? 』

するとついには堪忍袋の緒が切れたのか俺が任務に参加しなかった事とか普段がだらしないとか言い出した。
まぁでも…俺は彼女の夢を叶えてあげられないから逃げて正解だと思ってる自分もいる。
憂鬱な気分になりながら新メンバーが増えたワルキューレの動画を眺めた。

「 それより、レミア。今日という今日は作戦に参加しろ! 」
『 嫌だね 』
「 …前までそんな性格じゃなかっただろ、レミア… 」

俺が即答するとボーグはつらそうに顔を顰めた。
こんな顔させたいわけじゃないんだけれど。

『 …あーあ! 久しぶりに動きたくなってきたなー! …任務、参加してやろーか? 』
「 !! 」

俺がそう言うと花が咲いた笑顔でルンをピカピカさせながら頷くボーグ。
え、まって、僅かにきゅんとした自分に引く。

『 あ…似てるんだ 』

すぐルンを光らせるところとか、単純なところとか。
似てるから胸が高鳴ったんだ、寧ろそうであってくれ。
そう願いながら伸びをして遺跡に移動する。
隣ではボーグが久々で嬉しいのかこれまでの事とかこれからの作戦とかを頬を染め自慢げに話す。

『 …ボーグって俺のこと大好きなのな 』
「 は…? ち、ちが、好きだけど違うからな!? 」
『 はいはい。でも……お前は今日きっと、俺を嫌うよ 』
「 …? 」
『 あ、先に行っててくれ 』

きょとんとしたボーグを置いて1度ドランケンに戻る。
ボーグにはあんな風に言ったけど彼女に拒絶されたらそれはそれで俺はボーグのところに戻れる。
あれ、なんだ、俺もボーグのこと好きじゃん。
ドランケンに着くと操縦機にかけてあったネックレスを取り来た道を戻った。

《 おい! レミア! まだか! 》
『 あー…今行ってるってば 』
《 …大丈夫なのか? 》
『 …大丈夫であるように、ボーグが祈っててよ 』

通信を切り早歩きでボーグの元へ向かう。
この風は間違いなく彼女だから。
でも会って何を話そう。話したところで───

「 お前が…! お前が裏切ったからレミアはおかしくなった! なんでお前なんだ…なんで俺じゃなくて、お前を選んだんだよ、アイツは… 」

目的地に着くとボーグがフレイアに向けて剣先を向けている。
ボーグの怒りはルンを通じて感じた。
いや怒りだけじゃない。悔しさや悲しさ、色々な感情が混ざっている。
気付かないふりをしたから、今苦しんでる。

『 ボーグ! それ以上はやめろ! 』
「 レミア…ッ、これ、は…その… 」
『 …本当は作戦に参加しない理由、知ってたろ、お前 』

フレイアの前に立ちボーグを睨みつける。
さり気なく手を握ってるけど拒絶はされていない。
これはこれでよかったって思える。

「 だってレミアはソイツが裏切ってからおかしくなった! なんでいつまでも裏切り者を庇うんだ! 」
『 裏切り者の前にフレイアだから。俺が世界で1番愛しかったフレイアに代わりないから 』
「 レミア… 」
『 フレイア、お前はどうしたい。俺は結論が出なくてさ。フレイアがこの手を拒絶するなら俺は大人しく空中騎士団に戻る。でもしなかったら…また少しは期待していいってこと? 』
「 …裏切ったつもりなんてなくて…ただ歌いたくて、それで… 」
『 うん、知ってる。それがフレイア・ヴィオンだもんな! 』
「 ッ、レミア、ごめんね!本当にごめん… 」
『 いいんだよ。気にするな 』

フレイアが俺の背中で泣いている。
泣き虫なのも相変わらずのようでほっとする。
でも泣き虫なのはもう1人いて。
目の前で絶望して涙目になりながら俺に刃を向けているボーグだ。
色々考えたけど2人共救う道なんてなかった。
どっちかは切り捨てなきゃいけない。

『 …でもな、フレイア。俺は空中騎士団も裏切れない。だから…お前にはコレをやる 』
「 コレ…でもコレ! レミアの大事な… 」
『 いいんだってば。頑張れよ。ワルキューレのフレイア・ヴィオン 』

最後に頭を撫でるとフレイアから離れ目の前で涙目からもう涙が溢れてしまってるボーグを抱きしめる。
ボーグも抱きしめ返してくれてずっと泣いている。

「 よかっ、た…! 」
『 心配かけたな、ごめん 』
「 ほんとだ、ばか…ッ! 」

俺の方が身長が高いからすっぽりと腕の中に収まるボーグの頭を撫でる。
多分、コイツにはとことん甘いんだろうな、俺。

そして皆この状況にどう反応をとればいいのか困っていてワルキューレが着いても尚離してくれないボーグには少々困ったが今はいいかと思った。
後でキース様に怒られたけど。

End

BLかもしれない、多分そう。
でも主人公はちゃんとフレイアの事も好きだったんです。
ボーグの破壊力に負けたんです。

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