こんなに近くに、一番近くにいるのに

少し前に出逢った少年に一目惚れをしました。
なんてこの戦争をしている時に言ったら馬鹿にされてしまう。
でも本当に一目惚れというものを人生で初めて経験したのだから、少しくらい浮かれてもいいじゃないか。

『 クロト! 食事の時間なんだけど…他の2人は? 』
「 さぁ? 知らないね! 」

流石に1人で食事をするのはいくらなんでも寂しいからついこの間出逢った3人と一緒にとっている。
しかしそのうち2人がいないではないか。

「 …なに? レミアは僕だけじゃ不満? 」
『 ふ、不満じゃない! でも、その、いいの? 』
「 良くなかったら最初から一緒にいないけどね 」

そう言いながら私の手を引っ張り移動する。
どうしよう、この手をつたって私の心臓の音が聞こえたら。

「 それにしても何処に向かってんのかね、これは 」
『 またムルタ様の話を聞いていなかったの? 今はオーブに向かってるってこの間言われたじゃない 』
「 そんなこと言われたような、言われてないような… 」

ムルタ・アズラエル様。
反コーディネーターを掲げる政治団体〔ブルーコスモス〕の盟主であり昔からこの運動に最大の出資をしてきたアズラエル財閥の御曹司。
私はと言うとそのアズラエル財閥の使用人である。
1番あの人のお気に入りとして常に行動を共にしているが私は正直な所好きではない。

「 ……、まーた暗い顔してるし。僕言いましたよ~?
レミアに暗い顔は似合わないし好きじゃないって! 」
『 …またそんな顔してた? 』
「 してたしてた。はい、あーん! 」

クロトなりの励ましの仕方なのか、食事を一口サイズにして私に突き出してくる。
一瞬戸惑いつつも周りを確認してからそれを食べる。

「 そんなに周り気にしなくてもいいんじゃないの? 」
『 ダメだよ。いくらムルタ様から許可を頂いたとはいえこれでも戦争中なんだし… 』

そして戦争中なのだけれど恋仲がいる。
クロト・ブエル。データには生体CPUとして登録されていてまず私はそれが気に入らない。

「 はぁ…テメーらイチャつくなら部屋でやれよ! 」
「 レミア先に食べちゃった? 」

遅れて私が捜していた2人がやってくる。
あぁ、クロトといる時間も好きだけど別枠でやっぱり皆といる時間も好きだな、と改めて思う。

「 残念! 食べちゃいました! 」
「 クロトには聞いてない 」
『 ごめんね、2人共。ところで何処に行ってたの? 』
「 おっさんの所。クロトはレミアといるから放置しとけ、って言われたんだよ 」
『 なっ…! 』
「 分かってんじゃん♪ あのおっさんも 」

オルガの言葉に熱が集まる。
なんて事を言うんだあの人は…いやほんとに。
熱を冷まそうと顔を1人で伸ばしてるとクロトに横から伸ばされた。
ちゃんと力加減してくれてるあたり本当に優しい子だと思う。
それをおかしそうに笑うオルガに反対から引っ張ってくるシャニ。但しシャニは力加減が下手なのかはたまたわざとなのか痛い。


今から戦争をするなんて思えないほどこの幸せな時間がずっと続けばいいと願っていたのに。


『 ムルタ様、薬を彼らに渡してください! これはあまりにもやりすぎです…! 』
「 おや、レミアはいつから僕に意見が言えるような子になったんですか? 」
『 ッ、いつだって言おうと思えば言えました。ただこれはあまりにも酷い…! 』

手元のタブレットの映像でクロト オルガ シャニが薬をもらえずに苦しんでいる。
誰にだってミスはあるのにこんなの酷すぎる。

「 …まぁ普段我儘を言わないレミアのお願いですからね。いいでしょう、アレに薬をあげても 」
『 ぁ、ありがとう、ございます…! 』

本当はお礼なんて言いたくないけどあの人は何をするか分かったものじゃないから。
顔を見ずに走って閉じ込められている部屋にいく。
研究者から薬を奪い3人に渡すと3人はそれを一気に飲み干した。

「 グリフェプタンを10単位追加してある。2時間はもつだろう。また苦しい思いをしたくなかったら今度は頑張るんだな 」
『 ~ッ、アンタねぇ…! 』

他人事のようにいう研究者に腹が立ち胸ぐらを掴んで締め上げるとスカートの裾が小さく引っ張られた。
振り返るとクロトが首を振っている。

「 だい、じょうぶだから…! 」
『 クロト… 』
「 くっそ…! 」

クロトが泣き疲れたのか屈んだ私にもたれかかってくる。
優しく抱きしめるとクロトは独り言の様に小さくごめんねを連呼していた。
謝ってほしいわけじゃないのに。
落ち着いた頃に彼らはまた行ってしまった。

『 頑張ってね、クロト 』
「 うん、頑張るから、待っててよ 」

苦しそうに微笑むとレイダーに乗り込んだクロト。
他の2人にも声をかけるとやっぱり苦しそうだった。
いつまでこんなことしなければならないのだろうか。
そんな事を考えていたらムルタ様から声をかけられる。

「 戦場に出てみますか? 」

これが私を変えた鍵となる。


End…?

続くかもしれない。


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