甲板の端でうとうとしているレンを見かけて、思わず傍へ足を向けた。
こんなとこで寝んなよ、と声をかけると、眠たげな目がこちらを見上げ、腕が伸びてくる。
その腕に逆らわず、引っ張られるまま隣に寝転んだ。
「エースはかわいいね」
聞き慣れた甘ったるい声。見慣れた笑顔。
いつものように抱きしめられて甘やかされる時間。
最初は気恥ずかしくて情けなくて拒否してばかりだったのに、気づいたらこれがないと落ち着かなくなっていた。

うと、と瞼が落ちる。ねむたいの?と優しく囁かれた。
返事をするのも億劫で、回していた腕に軽く力を込めた。
微かに笑って抱き返される。額に落とされた唇の感触がこそばゆい。
「おやすみ、エース」
「おやすみ、レン」

暖かい気持ちで目を閉じる。
こんなに穏やかな気持ちで眠れる日々がくると、幼い頃は思いもしなかった。
人から特別な一人として愛されるようになるなんて予想だにしなかった。
生温い幸せに身を浸し、無意識に頬を緩めてエースはすこんと眠りに落ちた。




「見ろよ、マルコ」
甲板の片隅にいたサッチに手招きされて、訝しげに寄っていくとそう指をさされた。
その方向に視線を向けると、なんとも幸せそうに眠る末っ子たちの姿。
恋人だというのに色なんて何も感じさせない、ただただ暖かい光景。
「かわいいな」
ぽろっと口から零れた。仕方ない。大事な家族で、可愛い末っ子たちだ。
「本当にな」
隣のサッチも可愛くてたまらないというように目を細めていたから、同じ気持ちなのだろう。

少し眺めていると、レンが薄く瞼を上げた。
被っていたブランケットを横にして、自分の隣とエースの隣に行くようにかける。
寝起きで掠れた声で呼ばれて、思わずサッチと目を合わせた。
大の大人が4人揃って寝ろってか、と考えながらも、言われるがまま同時にレンとエースの隣に寝転がる。
仕方ない。他の野郎共ならいざ知らず、どこか子どもっぽい末っ子2人は可愛くて仕方ないのだから。
それこそ、大の大人4人で並んで寝てもいいと思うくらいには。
満足げに笑ってまた目を閉じたレンと、心なしかさらに頬が緩んだように見えるエースの寝顔を見て、マルコとサッチもまた目を閉じた。



「は!?」
目が覚めて体を起こしたエースは周りを見て目を見開いた。
隣にはレンとサッチ、レンの向こうにはマルコ、そのさらに向こうには──他の家族たちがごちゃっと寝こけていた。
ぱちぱち瞬きしながら、口を開けたまま周りを見渡す。

寝こけた家族たちのさらに奥、白ひげ海賊団の父は平和そうにグラグラ笑っていた。
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