今度手が空いた時に名前変換差し替えて短編にあげるかも


「リア……!」
リアの姿を見た途端、12年振りにシャワーを浴び、髪を切り、身綺麗にして石けんの優しい香りに包まれたシリウスがぱっと駆け出す。
「リア、リア、すまなかった、俺が何もかも悪かった!ハリーにも寂しい思いをさせ、止めてくれたお前を振り払ってまで奴を追いかけた結果この体たらくだ。本当に悪かった!」
ぎゅうと固く抱きしめて、頬をリアの頭に寄せて、何度も思い出した愛しい女をこの腕に抱きしめられる幸せに酔う。
なぜこんなにも大事な彼女も、魂の双子の忘れ形見も放り投げて自分の憎しみに従ってしまったのだろう。
それよりも大事なことがあったはずなのに。

「ええ、本当に」
冷たい声。
抱き返してくれない腕。
「リア……?」
ぞっとした。
リアだけは自分を待ってくれていると思っていた。
変わらず愛してくれていると思っていた。
──あんなことをした、俺でも。
「腕を振り払われた時、私がどんな気持ちだったかわかる?」
「あなたがいなくなってひとりで泣くのがどれだけつらかったかわかる?」
「親友を喪って、婚約者に捨てられて、親友の忘れ形見も引き取れなかった私の気持ちがわかる?」
矢継ぎ早に告げられる言葉の中、見過ごせない一言にだけはどうにか反論する。
「捨ててなんか……!」
「捨てたじゃない」
それすら遮る冷たい声。
誰よりも愛しいひとの、自分が振り払ったひとの、冷たい声。

「リ、ア……」
もういっしょにいてくれないのか?
待っていてくれなかったのか?
──もう、愛してくれないのか?
ひゅう、と息をのんだ。
信じていた。なんの根拠もなく信じていた。
リアが俺のことを嫌いになるわけはないと盲目的に信じていた。
俺が、振り払ったのに。
「リア!すまなかった、わるかった……!俺が全部悪かったから、ゆるしてくれ……っ!」

ぼろ、と涙がこぼれた。
ぎゅうぎゅうと必死に腕に力を込めて、決して離すまいと抱きしめる。
失いたくない。失いたくない。
支えだったんだ。
恐ろしい牢獄の中で、悍ましい吸魂鬼に耐えられる支えだったんだ。
奴への怒りもあった。
だがそれよりも大きく、ただリアのもとに帰ると決意して耐えていたんだ。
「リア、リア………っ!」

捨てないでくれ、嫌わないでくれ。
もうなくしたくないんだ。
シリウスはリアに縋りつくようにしがみついて、赤子に戻ったように泣いた。
ハンサムな顔をくしゃくしゃに歪ませて、抱き返してくれる腕を想って泣いた。
「悪かった、俺が悪かった……っ!……ッたのむ、嫌わないでくれ……」
なりふり構わずに泣きじゃくり、痛いくらいに抱きしめてくるシリウスに、リアはそっと息を吐いた。
それにすらびくりと震えて怯える体に、とうとうそっと腕を回した。

「ッリア……っ!」
また涙がこぼれる。
「仕方ないなあ」
何度も聞いた言葉だけ見たら文句のようなのに、ひどく愛しそうに呟かれる声。
とん、とん、と背中をあやすように叩く手。
──ああ、リアだ。
「う、ぅ〜〜〜〜……っ!リア……っ!」
情けなくも、声を抑えられなかった。
もう本当に赤子のようだった。
声を上げて泣いて、唯一の支えにすがりついた。
「わるかったリア、ごめんなぁ……っ!」
泣きじゃくるシリウスの頭をそっと肩に導いて頬をすりよせ、リアもまた、愛しいひとがようやく帰ってきてくれた幸せに泣いた。
「シリウスのバカ……っ!」
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