読んだの本誌時代なんでめっちゃ記憶朧気です注意

私には、弟がいる。かわいいかわいいリクオ。私と目が合ったとき、おねーたんと手を伸ばしてくれたかわいい弟。ーー奴良組の、たった1人の跡取り。

後継となる男児を皆が待ち望んでいるのは知っていた。中には陰で彼女が男であれば、と言うような輩もいた。
それを聞く度、柔らかい彼女の心は傷ついていった。

そんな日々が続き、ある日リクオがーー待ち望まれていた男児が生まれる。
大事な跡取りに組の妖達は夢中で、両親もリクオに付きっきりだ。
彼女の世話を任された妖は、悪びれることもなくこう言った。
『リクオ様は、貴方とは違うのです。立派な男児、立派なたった1人の跡取りなのです。…貴方様はご自分の立場を認識してくださいますよう』
ーー世話役を任されるだけあって、その妖は素行も性格も問題はなかった。その言葉に悪気もなかった。当然のことを言ったつもりだった。ーーただ、彼女には衝撃が強すぎた。

******

歌とともに、鯉伴の後ろに女があらわれる。そのまま鯉伴の方へ駆けていく女を見て、彼女は弾かれたように走り出した。
鈍い、気持ちの悪い音がして、鯉伴はばっと後ろを振り返る。
娘の小さな体が自分に押し当てられる感触に、思わず立ち尽くした。

「○○…?」
彼女は、霞む目を無理やりこじ開けて、父の頬に手を当てる。
「2代目様…ごぶじ、ですか…?」
ああ、いつの間に娘は、自分のことを2代目様と呼ぶようになったのだろう。
そんな場合ではないのに、頭は違うことで埋め尽くされていく。

「3代目様は…だいじょうぶな、はずです」
それを聞きたいんじゃないのに。今1番大事なのは、目の前の娘なのにーーこえが、でない。
「…とうさま…わたしを、すきになって、…くださいますか…?」
縋るような目だった。幼い娘に似合わない悲しい瞳が、鯉伴を貫いた。
親を庇って刺され、血に塗れているのに痛みを堪えて、そうしてやっとそんなことを尋ねられる。それも、今は嫌われていると思っていて。

「○○…○○…!!」
ガタガタと体が震えるのを感じる。娘を、大事な愛娘を、この腕の中で、自分のそばで、失う…?ーー許せるはずがない!
既に娘を傷つけた輩は退却していた。そういえば、呆然とする意識の端で失敗した、退くぞという声を聞いた気がする。
だが、そんなことはどうだっていい。
今大事なのは、自分の腕の中で死に直面している愛娘のことだけだ。

鯉伴は、ぎゅっとその腕の中に愛娘を隠し、屋敷の方へと風のように駆け出した。



ちなみにハッピーエンドです
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