「エドワード・ニューゲートの船で相違ないか?」
見慣れぬ黒い服の男が来たのは、春島にほど近くなった時だった。
もうあと数日で物資補給のため島に立ち寄る、といったところで現れたその男に、白ひげ海賊団の面々は警戒心を顕にする。

「ああ。ここは白ひげ海賊団。船長はエドワード・ニューゲートだが…何の用だよい」
今にも剣−銃やそれ以外もいるが−を抜こうとする船員を抑えるように、マルコが前に出た。
「お前らも落ち着けよい。オヤジの客かもしれねぇだろ」
そういう彼自身も、剣に手をかけないまでもいつでも動けるよう体制は整えている。

「いや…大した用じゃない。昔の知り合いでな…。あいつは今どんな風に過ごしてんだか気になって来ただけだ」
男はそう言って感慨深そうに周りを見回した。
「オヤジの知り合い…にしちゃあ随分と若いな。珍しいこった。茶でも出すか?海賊らしく酒でもいいぜ?」
甲板のただならない様子に気付いたサッチが、いつの間にか出てきていた。
コック帽を手に持ち、人懐っこそうな笑みを浮かべて返事を待っている。

「いや、それには及ばないさ。…ここは、いい船だな。それに、いい家族にも恵まれたようで何よりだ」
彼は、ニューゲートが船に乗る船員達を家族と呼び、そう接していることを知らなかった。けれど、船や船員達の雰囲気からそう言った。
そしてその言葉を聞いてやっと船員達から緊張が抜け落ちた。

「いい船だって?そりゃオヤジの船だからな!あんたオヤジといつ知り合ったんだ?」
「お前ら散れよい!仕事に戻れ!」
その場にサッチとマルコと男の三人を残して船員達は三々五々散っていく。
好奇の視線は感じるが、男は特に気にすることなく応えた。
「随分昔だ。おれもあいつもまだ若かった頃」
「おれもって…二十そこらにしか見えねぇよい」
マルコは驚愕を顕にして男を見つめる。
逆にサッチはどこか納得した表情を見せていた。
「でも、雰囲気的にはオヤジと同年代って言われても全然納得いくぜ。そういう島の生まれとか能力とかか?」
「まぁ…秘密だ」
自分の能力を隠すのはそう珍しいことでもない。そう言われれば、サッチも特に追求せず次の話題へと変える。

「じゃあ、オヤジとはどういう関係だったんだ!?」
珍しい平和な客人に興味がとどまることを知らないのか、サッチは矢継ぎ早に質問を飛ばす。
「どういう…か…。そうだな…馬鹿な弟を引っ張る兄みたいな関係だったよ。もちろん、馬鹿な方がおれだぜ?」
彼は茶目っ気たっぷりに片目を瞑って笑った。

「へえ!やっぱオヤジは若い頃からしっかりしてて格好よかったんだな!」
「ああ。おれはいっつもあいつを振り回して、しかもそれを省みなかった馬鹿野郎だったからなぁ…」
遠い目をしてそう言った男は、一つ瞬いて眼前の2人に焦点を合わせると、あいつの懐のでかさが分かるだろ?とにっと口角を上げる。
「ああ!まぁ、オヤジの懐のでかさはおれらもよく知ってるけどな!なぁマルコ?」
聞き役に回っていたマルコの方を向き、サッチは笑った。
マルコは頷きつつ遅くなったが、と男に尋ねる。
「おれはマルコだ。こいつはサッチ。あんたは?それと、寄ってくのかよい」


本題まで行かず
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