「サッチさん!!」
特徴的なリーゼントを目にするや否や、○○はぱっと顔を華やがせて駆け寄った。
海賊船にいるには珍しいくらいの、年若い少年。けれど彼が船に乗ったのはさらに年少の8-9歳の頃だった。

○○は、元々島に住む平凡な子供だった。優しい両親がいて、生活にも困っていない。山賊もいない平和な島で健やかに育っていた。
しかし評判の悪い海賊が上陸したある日、その平穏は崩れ去った。
目の前に広がる凄惨な光景が○○を呆然とさせた。
赤い水溜まり。下品な笑い声。燃える家屋。
両親を眼前で殺され、自身も連れ去られようとしていた○○を助けたのは、遅れて上陸した海賊−−サッチだった。

元来人のいいサッチは親の死体に縋って泣く子供を放っておけず、一緒に弔ってやり、服を掴んで離れなくなった○○を引き取ってやった。
海賊船に子供を乗せるのに渋い顔をする船員もいないでもなかったが、オヤジと慕う白ひげが許したのだから、と何も言うことは無かった。むしろ、慣れてから見せる○○の笑顔にメロメロになる始末。
次々に部屋に増えていく玩具や菓子類にとうとうサッチが禁止令を出すまでそう時間はかからなかった。

そんな当初と比べて随分大きくなったなと感慨深いものを感じつつ、サッチは立ち止まった。
「おー○○!どうした?」
「あのね、サッチさん、おれご飯作ったんだよ!…食べて、くれる?」
慣れたように屈み、昔母さんから教えてもらったんだ、と寂しそうに俯く○○の頭を撫でる。

「当たり前だろ、○○。お前が作ってくれたもんを食べないなんて選択肢ねェさ。ありがとな」
「ううん!」


****

ティーチがサッチを斬らんと剣を掲げた瞬間、それを弾くほどの威力を持ってナイフが飛んできた。
「サッチさんに近付くな…!!!」
投擲し終わった姿勢のままそう叫んだ○○が、カウンターを乗り越えてキッチンへと躍り出る。
鉄と鉄が交差する鋭い音に咄嗟に振り返ったサッチはしかし、目の前の光景を理解出来ずに戸惑うばかりだった。

「…○○よォ…お前ェはいつもおれの邪魔をしやがるなァ」
「サッチさんを狙うお前が悪い」
「別におれァサッチを狙ってるわけじゃねぇんだぜ?その実が欲しいだけで、よッ!」
そう言うやいなや切りかかってきたのをどうにか受け止め、〇〇は叫ぶ。
「サッチさん逃げて!!おれはいいから…!!」
「逃がすか!お前じゃ相手にもならねェんだよ!」
「うぁッ…!」
力尽き
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