要領よく計画的





宿題。
生徒に自宅でやらせる課題。解決されずに持ちこされた問題。学生視点から言えば主に前者を指す。







夏休みに入った。
今日は友人宅での勉強会。









「て、言うことなんだけどどうしたらいい!?」
「自業自得」
「自分で言ったことは自分で責任とりなさい」


どうにもこうにも冷たい僕の友人達。
人が、真剣に、あの、こ、こ、告白事件について相談してると言うのに!


「もうちょっと真剣に聞いてよ!」
「聞いてるよ
というか、何にもないんでしょ?
告られてからこの夏休み入るまで」
「だぁー!やめっ、ストップ、鬼男!
こ、告られたとか言うなって!」


口に出されるだけで忌々しい。


「いや、だってそういう話…
まぁいいや、それからなんにもないならほっときゃ良いんじゃない?」
「そうですよ、どうせあの太子さんのことですしそんな奇行いつもの事でしょう」
「うー…ん?」


正直良く分からない。
あの、告……事件が起きたのは7月始め。あれから期末テストがあったり、三者面談があったりで(それに3年は忙しいし)、近所だと言うのに太子と全くと言って良いほど会えていないまま夏休みを迎えた。
メールも、特に意味のない何時も通りの内容。
あの人は幼なじみの僕でもわかんないような思考で、突然奇行を起こす事があるから良く分からない。


「ま、取り敢えず今日はせっかく勉強会開いたんだから、進めよう?」
「うん
…あ、でも僕もう今日のノルマ終わった」
「「………」」
「え、なに?」


終わった数学の問題集を片付けていると、鬼男と曽良は怪訝な目を向けてくる。


「話して周りの勉強止めてるくせに」
「自分はちゃっかり勉強しているんですね…」
「え、いや、僕口も手も同時に動かせられるタイプだから、さ」
「せっかく相談聞いてたのに」
「僕らが手を止めている間、自分は抜け駆けですか…」
「いやぁーそのー……あ、着信!」


ポケットから震える携帯を取り出す。
2人に詰め寄られて圧倒的に不利な状況を打破してくれた携帯の振動に感謝しながら携帯を開く。
が、次の瞬間その感謝は崩れさった。







着信中 太子







「………」


携帯片手に固まってしまう。
さっき鬼男や曽良に言ったように、あの日以来ろくに話してもいないのにいきなりこんな時に電話なんて…


「とらないの?」
「あっ!」


いつまでも電話を取らない僕を見て鬼男が携帯の液晶画面を覗き込んだ。
そしてタイムリーだ、と言うやいなや横から通話ボタンを押して来た。


「えっ、ちょっと!」
「はい電話に出るー」


ニヤニヤしながら鬼男が親指を突き出してくる。普段笑わない曽良も口角を上げてこちらを見ている。
くそう、親友だと思っていたのに…
自棄になって電話に出る。











「…もしもし」
『コラ!芋!とるの遅いでおまっ!』
「ちょっ、うるさい叫ぶなアホ!」


太子があまり大声で叫ぶものだから、耳から少し携帯を遠ざけた。
すると、すかさず鬼男と曽良が携帯に近づき、会話を聞こうとしてくる。この2人案外やなやつだ…


「で、何か用ですか?」
『ああ、妹子今暇か?
暇なら…出かけないか?』


暇、と言えば暇な部類に入る気がする。(なんせ今日のノルマは終わったし)
だが、今日は勉強会で曽良の家に集まっているのだから太子と出かけている暇はない。
それに何よりあの件の後だし…会いづらい。


「暇じゃないですよ
鬼男と曽良と曽良の家で課題してるんです」


だから忙しいんです。そう続けて断ろうしたのに、僕の手にあった携帯は曽良にいともたやすく盗まれた。


「妹子は暇みたいですよ
今日のノルマ終わったみたいですし、僕らの勉強の邪魔なので連れ出してください」
『おっ曽良か
わかった今から迎えに行くって妹子に伝えてくれ!』


そう言って太子はすぐに電話を切った。


「…だ、そうですよ」
「………もう君らは友達じゃない…」
「デートのお誘いでしょ?良いじゃん別に」
「デートって!!僕らは男同士なんだよ!」
「でも告白して了承したじゃないですか、
付き合ってる同士で出掛けるとなればそれはデートですよ」
「そうそう、てかノリでイエスとは言わないと思うよ普通
だから妹子なんだかんだ言って太子先輩のこと…」
「そんなわけないだろ!」
「男だとかそんなの無しにお似合いだと思うんですけどね…」
「誰と誰が!?」
「「妹子と太子先輩」」
「…………」


お似合いってなんだよ…
僕らは男同士だし、
太子は幼なじみだし…

付き合っている、って言ったってほぼ一方的に告白されて…なんか、ノリで応じちゃっただけだし。
それに本気なのか冗談なのかも未だに分かっていないと言うのに…
一体どんな気持ちで太子と会えば良いのだろう。


「…まぁ、普段通り遊んでると思えば?」


鬼男が背中を叩いて言ってくれた言葉もよく頭に入らなかった。
















要領よく計画的
(宿題なら出来るのに恋となると上手くいかない)

曽良の家に響いたチャイムの音に、窓から逃げたしたかったけど
僕は無理やり玄関へと投げ出された。





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