B




「楽しそうだね」

振りかえるとにやにやと言った表現の正しい笑みを向ける閻魔大王。

「よくどこかに行ってるのを見るけど、何してるの?」
「…後釜を育てに」

負けじと僕もにやにやと笑みを返す。
「後釜?」気になった様子の相手に得意になって話す。

銀と名付けた子鬼のこと。
銀が優秀であること、なんとも可愛らしいこと、自分でも親バカなんじゃないかと苦笑できるほどベタ褒めで話した。



「…ふーん、そこまで言われるとオレも見てみたいな」
「大王が見ると汚しちゃいそうなので嫌です」
「ひどいっ、見るだけで汚しちゃうとか…オレこんな部下とこれからやっていけるのかな…」

嘘ですよ、と笑えば口を尖らせてブーブー言っている大王。
子供かアンタは。
銀の方がよほどしっかりしてる。

「僕の次の秘書はアイツしかいませんから、必ず見れますよ」
「親バカだね」

大王に苦笑されてしまった。



「そうそう、君の名前ね、次の仕事の時には決めようと思う」
「やっとですか?遅いですね」
「ずごいいい名前にしようと思って凄い悩んでたの!」
「えー、悩んだところでいい名前なんて出てくるんですか?」
「出てくるよ!最終候補の振り向き良さ男に勝ったぐらいにいい名前だよ」
「うわぁ、期待できない」

名前が不安で仕方ない…。
それでもやっと秘書として働けるのだ、嬉しさが込み上げてくる。
次の仕事の前にでもアイツに知らせに行こうか。


















タッタッタ

今日もいつもの如く血の池の横を落ちないように走る。
いつの間にか楽しみを持ちながらここを走るようになっていた。



「楽しそうにして」
「銀の鬼の子のくせに」
「憎たらしい 子鬼」


亡者達の声にあっかんべをする。

(おまえらなんか気にするもんか!)

俺は、俺のこの髪は特別なものなんだ。
そういう風に思えるようになったのは俺を肯定的に見てくれた兄ちゃんのお陰だ。

(兄ちゃんもう、名前決まったのかな)

握りしめていた手を開き、草原で拾った金色の綺麗な石を確認する。
光に透かすときらきら綺麗に輝くそれは、兄ちゃんの髪によく似てる。
これは俺からのお祝い。

石をもう一度握りなおして次の一歩を出した。

(えっ、)




ところが出した足は地を踏まず、体が傾いた。
足にまとわりつく無数の手が見えた時は遅かった。俺の体はバランスを崩して血の池の中に落ちていった。

(しまった、)
「ざまあみろ」
(ここは地獄なのに)
「引きずり込んでやる」
(浮かれてた…っ)

亡者達の笑い声が響く。
俺は血の池の下へ下へと引きずり込まれていった。

(血なまぐさい…苦しい…)

もがいてみたけども視界もぼやけて遂に意識を失ってしまった。


















































はっ、と瞼があいた。

(あ、れ)

先ほどまでの赤い景色は見えない。

「目覚めたかい?」

突然優しい声が降ってきた。
顔をあげると安堵した表情の黒髪の人の姿があった。

「オレは閻魔、意識は…あるね」

閻魔?閻魔大王?
なんで閻魔大王がここに?
俺はどうして閻魔大王と一緒に?

「混乱するかもしれないけど、大事なことだからね、今から君に全て話すよ、落ち着いて聞いてね」
「……」

俺はわけも分からぬまま、その力強い眼差しに従って頷いた。





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