偶然の一致



(!現パロ)

今日まで2週間も出張だったんだ。つまり2週間も妹子と会っていない。
同棲している恋人、妹子。アイツからはこの2週間一切連絡を寄越さなかった。恥ずかしがり屋なのは重々承知だが、ここまで奥手だと不安にもなる。
電話で「寂しくないか」と聞けば「家が静かで助かります」だとか、「あと2週間で帰ってくるからな」と言えば「早いですね…」と渋そうな返事。
勿論本心ではない、はず。だって私たちは恋人であって愛し合っているのだから!








14日ぶりの懐かしいマンションのドア。
このやけに頑丈そうなドアの奥に妹子がいると思うと気持ちははやる。手を掛けると鍵かかっておらず一気に開けた。



「ただいま妹子!逢いたかったか!?」

靴も飛ばして脱いでリビングへ直行。
テレビを点けながらパソコンをいじっている妹子が首だけをこちらに向けた。

「あ、今日だったんですね」
「お、お前…」

くつろいでますオーラ満開の妹子は遅れて「お帰りなさい」と続けた。

「妹子寂しかっただろう、私は寂しかったぞ!お前に触りたいし、お前の声はずっと聞いていたいし、お前が1人で泣いてないか心配にすらなっ」
「うざい」

せっかく私が妹子に対する愛を語り聴かせてあげたと言うのに妹子はテレビの前でデッキをいじりながら一蹴した。

酷い…。
私はこの2週間本当に寂しかったっていうのに…もしかしたら妹子にとってはこの2週間はさして不便もない、なんともない2週間だったのだろうか?
私だけがこんなに思っているのだろうか…
今すぐお前を抱き締めたいと思う気持ちも、声高らかに好きだと叫びたい思いも、私だけか?



「太子、」

思考のなかでぐるぐるしていると急に妹子の声が頭に響いた。

「いつまでそこでつったってるんです、荷物置いてきたらどうですか?」
「あ、あぁ」

促されるまま自室へ荷物を置きに行く。家に入って来たときとは反対に足取りは重たく緩慢なものであった。

荷物を置き台所に向かう。
帰り道は急いで来たため、喉が渇いていて仕方がない。
冷蔵庫に貼られたカレンダーと目が合った。何となく目で追ったカレンダーの日付、今日の日付に赤丸が付いている。
はっ、とリビングの方に顔を出してテレビを向いている妹子の背をみた。

「妹子、このカレンダーのって!」
「…今日スーパーがセールなんで」
「へぇ…」

冷蔵庫を開けると私の好きな、妹子は苦手な炭酸飲料が一本。それだけじゃない。人参、玉ねぎ、じゃがいも、肉がセットされている。冷蔵庫の横には近所のスーパーの袋、その中にはカレーのルーが入っていた。

「妹子!今日カレーなのか!?」
「たまたま野菜安かったんで、楽ですし…」

まだテレビの方を向いて、こちらに顔を見せない恋人が愛しくてたまらない。
彼が今しがたテレビにセットしていたDVDは私が好きだと言っていた深夜のバラエティーの録画もの。

ああ、なんだこの可愛い生物!
先ほど部屋へ向かう時の足取りが嘘のように軽やかに、そして素早くリビングへ向かう。
そしてソファーの上、テレビに正面向けた照れ屋な恋人にダイブ。
突然の衝撃に苦しそうな表情をしたが、妹子も私も互いに幸せな気持ちなのは分かっている。



「几帳面なお前が鍵を開けっ放しにする時点でおかしいもんな」

抱きついた彼から伝わる体温は上昇していく。

「たまたま、忘れただけです…」

消え入りそうな声でまだ虚勢をはる。






鍵が開いてたり、
カレンダーに印ついてたり、
私の好きなジュース置いてたり、
1人で食べるには多いカレーの材料があったり、
好きな番組録画しててくれたり、

全部が全部、否定するならそういう事にしておくけど。






















偶然の一致
(お前が言うならそういう事にしておくけど、)
(こっちも都合のいい解釈をさせてもらう)



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同棲って素晴らしいです
ツンデレを書きたくなった物。



100425







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