初逢引き



(!現パロ)

毎年毎年年越しには太子が家にやって来る。
1人で騒いで、餅食わせろなんだの言って暴れたり、最終的には疲れて寝ちゃって、いつの間にか年明けてて、日が昇ったあとに初詣に行く、という悲惨な流れが出来上がっている。

でも、今年は違う。

僕は学んだ、今年は太子と年越しをしない。後から初詣には一緒に行く。
そりゃ年越しに好きな人…と一緒に居たいって思う気持ちもあるけど、それよりも年末年始に忙しい思いをしたくないって気持ちの方が大きい。






ゆく年くる年の鐘の音を聴きながら明ける年。
ああ、素晴らしき1人の元日。

―ピンポーンピンポンピンポンピンポンピンポーン―

インターホンのけたたましい音が連続的に聞こえた、
と思うと次には扉が開かれる音かした。
年越しは家にずっといるからと鍵を閉めなかったのは間違いだったな、ととたんに後悔する。

カムバック僕の静かな元日。


大体すぐに開けるならそんなにインターホン鳴らすなよとも思うものだけど、そんな考えは扉を開けた人物に通用するわけがない。インターホンを押しただけでも成長したと思わなければ。

「いっもっこ!
あけましてーーまんぼっ!」

新年早々謎な挨拶とともに僕の家に上がり込んできた男。残念ながら僕の恋人太子だ。

「……あけましておめでとうございます」
「おいこら芋!せっかく恋人が新年の挨拶に来てやったというのに、なんだその目、その態度!」
「新年早々いきなり家に変人が乗り込んできたら誰だってそうなるわ!」

このアホが新年早々家に来ること考えていなかった僕が悪い。

「変人ってなんだ全く、初毒妹子め
こちとら新年の初挨拶は妹子にしようと思って電車もバスも通ってないなかお前の家まで年明け前から歩いて来たって言うのに…あっ今初妹子の家!」
「太子…この寒いなか歩いて年明けしたんですか…」
「可哀想な人を見る目で見るな!
『太子…僕のために…』ぐらい思え」

寒空の下1人で歩き、いつの間にか明けてしまった新年を携帯の時刻で知る悲しい太子の姿が浮かんだ。
僕の家から結構離れてるのに、この寒いなかご苦労なことだ。

「大体お前がどうしても1人で家で年越しするって言うからこうやって私が来る羽目になったんだ!
私は新年初妹子を誰よりも早く見たかったんだぞ」
「そりゃあんたと年越ししたら後始末が大変だからだよ!
もう僕を見終わって用も済んだようですし、後でまた初詣で会えるんだから帰って下さい」

わざわざ来てもらったところ悪いとは思うけど、とりあえず家に居座らせたら終わりだ。せっかく一緒に年越しをしなかった意味がなくなる。
僕はずっと下ろしていた重たい腰をあげ、太子を玄関の方へと押しやった。



「ま、待てって妹子、一番大事な初がまだ残ってるんだ」
「はぁ?」

さっきから初、初うるさいけどまだ何か変な初〜が出てくるのか?














「初デートに行こう」
「え…」

突然らしくない真面目な顔をして言った太子に少し面食らった。
太子はにっ、と笑い「だから今年はこうやって年明けすぐに来たんだ」と付け足した。

「初日の出見に行ってそれで、帰りは初詣行って、
…そうだな妹子の家で餅でも食べながら今年の事を話合おう」
「………
なんですかそれ結局例年と同じじゃないですか」
「そうなんだけど、新年初デートっていうとなかなかウキウキしないか?」
「ウキウキって…」
「ほら妹子早く出かける準備するでおまっ!」

もういつの間にか行くのは決定されてるのか。
今回もなんだかんだで毎年恒例の元日の過ごし方になりそうだ。

仕方ない、とため息をこぼして準備をする。
せっかく頑張ったのに全て意味が無くなった。そう感じながらも心なしか浮かれている。どうやら僕はこうやって過ごすのが嫌いじゃないのかもしれない。









「ほら妹子!」

差し出された手に手を重ねる。
握られたてをギュッと握り返す。
今年もよろしくの意を込めて。












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明けましておめでとうございます
元日に間に合わなかったもの
日記ログ



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