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「ねこ拾った!」
ずい、と黒い塊をシズちゃんの鼻先につきだす。俺の両手にわしづかまれた黒猫は、シズちゃんを目の前にしてピコピコと耳を反応させている。俺がこのかわいさでやられたのだから、動物好きのシズちゃんが敵うわけがない。ふん、と鼻をならしドヤ顔を携えてシズちゃんの反応を待っていると。
「…………っ」
ぶわっと彼の周りにフローラルなお花ちゃんたちが飛んだ気がした。そしてぐ、と口をつぐんでからゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。ああ、分かりやすい。
「んね、かわいくない?」
念を押すように首を傾げて問うとシズちゃんは悔しそうにこくりと頷いた。猫もかわいいけどシズちゃんもかわいい。ダブルで癒されているとシズちゃんが猫に手を伸ばしt、
「えっ」
「…かわいいんだよ、クソが」
手が黒猫をすり抜けて俺の頬へと辿り着く。そのまま体を引き寄せられた。
なに、どういうこと。
「シ、ズちゃん?」
無言で俺を強く抱き締めたシズちゃんの意図が、全くもって読めない。俺の手に包まれたままの猫は不思議そうに俺とシズちゃんを交互に見比べている。だが今の俺にそんな愛くるしい仕草にときめく余裕はなかった。
猫とシズちゃんがかわいくて仕方ない臨也とそんな臨也がかわいくて仕方ない静雄
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