※九十九屋と臨也が顔見知り
捏造注意です「結局さ、お前を愛せるのは俺だけだよな」
それまで俺の自宅のソファの上でふんぞり返ってコーヒーをすすっていた男が、何か癪に障ることを言った。
「は?」
聞き捨てならないな。
「どういうことだよ」
じとりと睨み付けるとその男――…九十九屋はシニカルに口元を歪ませた。
気色悪い笑い方すんな。
「どこから説明してほしい?」
いちいちウザい奴。
心の中で悪態をついて、自分のペースを狂わされないようにと平静を保つ。俺はこの男がどうも苦手だ。全て見透かされてるような感覚に陥るから。
……まぁそんなこと死んでも言ってやらないんだけど。
「お前は誰からも愛されていない……ここまではいいか?」
いいわけないだろ。
仕方ない教えてやる、と言わんばかりに人を見下したような喋り方をするこいつは、時々今みたいに変なことを言い出す。
しかも大体俺絡み。
「実際そうだろ」
「失礼なこと言うな……」
俺だって愛されてる。
例えば……。
そう続けようとしてすぐに口をつぐんだ。誰も思い付かなかったから。何も言えなくなった俺に、九十九屋は皮肉のたっぷり詰まった笑顔を向けてきた。
「ほうら」
メガネぶち壊すぞ。
「折原、愛してる」
これもいつものことだ。
定期的にこうやって俺に嘘の愛を囁く。一体何が目的なのか、奴の考えている事はさっぱり分からないし分かりたくもない。でもそのたびにビクリと心臓が収縮してしまう俺も死んだ方がいい。固まっていると九十九屋はコーヒーカップをトレイに置いて俺の腕を掴んできた。油断しまくってたのであっさり捕まったわけだが。九十九屋の膝の上に思いっきり倒れ込んだ俺はすぐに抵抗を開始したが、脇の下に入れられた掌に気持ち悪い感覚がせり上がってきた。
「キモイ!さわんな馬鹿!」
「はは、くすぐったがりだなあ折原は」
脇腹に這ってくる手を振りほどこうと暴れたけど、九十九屋の細いくせによく動く十本の指がざわざわと体を隈無く触りまくるもんだから思わず力が抜けてしまう。
もう全身鳥肌びっしり。
「ぃ……やだっ」
なんて触り方するんだこいつ!もうこうなったら、いつの間にか涙声になってしまっているのも気にしない事にする。まずはこの変態から逃れることが優先だ。つーかなんで家にあげたんだよ20分前の俺!まあ確かに電信による会話の応酬なんか埒があかないから、情報交換会的なものを開こうって誘ったのは俺の方だけど!勘繰りを利かせてなかった訳じゃない。どこか頭の隅でこうなることは予想がついていた?
体をまさぐられながらそんなことを考えている俺に絶望した。そして九十九屋はそれをあっさりとすくいとってしまう。
「期待してたんだろ、折原?」
いつの間にか体制は変わっていた。俺の視界にはいやらしく笑う九十九屋と見慣れた天井。
見事にマウンドポジションまでとられていて、そう簡単には逃げられる状態ではない。
九十九屋の言葉に顔に熱が集まったのが自覚できた。
「ちが、期待なんか…!」
もうなんで。
弁解すればするほど自ら墓穴を掘り進めているような気がしてならない。九十九屋の表情がどんどん楽しそうになっていく。
「愛してやるから素直になれ」
そう言って九十九屋は俺のベルトに手をかけた。
おれこいつきらい!
.
←