?臨 | ナノ


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「じゃーん!来ちゃった!」

夜分にインターホンを連打されてドアを開くと、妙にハイテンションな同級生が立っていて頭を抱えたくなった。

「びっくりした!?びっくりしたでしょ!もう今日来ないかと思ってたでしょ!残念、ドタチンの誕生日はちゃんと覚えてまあす!夜まで焦らしてみたんだけどどう?あ、これケーキね。俺夕飯食べてきたしぜんぶあげる」

息継ぎをしろ息継ぎを。聞いてるこっちが苦しくなるっつうの。手渡された袋の中を覗くとやけに高級そうなバカでかい箱が入っている。

「1ホールて…」
「それすごい有名なお店のやつだから多分おいしいよ」

ずかずか室内に上がり込み、どかりとベッドの上に腰を下ろして何故か嬉しそうに臨也が笑った。

「来るなら連絡しろよ…」
「それじゃサプライズの意味がないじゃん!」

大袈裟に手を広げて臨也はそのままベッドに倒れ込んだ。冷蔵庫を開け、夕飯の残りやらを隅に追いやりケーキを置くスペースをつくっている間も、黙ってられないガキみたいにべらべらと喋り続ける。

「そういえばドタチンもうご飯食べたの?あ、その格好、さては今からお風呂でしょ?グッドタイミングだったね俺!」
「飯は食った。そしてお前の予想通り今から風呂だ。だから頼むから邪魔しないでくれ」

マシンガンのように投げ掛けられる質問責めは、疲れきった体に実に優しくない。早く湯船に浸かりたい気持ちを抑えて律義に問いかけに答えてやってる時点で、俺はもう相当こいつにほだされていると思う。

「ちょっと待ってよ。まさかプレゼントがケーキだけなんて思ってる?」
「…まだなんかあるのか」
「もちろん。むしろケーキとかおまけだから!メインは、こっち!」

嬉々として高らかに声を上げて起き上がった臨也だがその手は何も持っていない。意味が分からずに突っ立っていると、何がそんなに楽しいのか分からないが珍しく裏のない(と思う)笑顔で続けた。

「1つだけ何でも言うこと聞いてあげる!」

そう人差し指を突き出された。

「はあ…」
「言っとくけど超レアだよこれ。あ、でもエッチなのは無しね!」

さあどうぞ!と迫られて、考える暇もなく間髪入れずに今の願望を口にする。

「じゃあ、大人しくしてろ」
「え゛」
「落ち着きないんだよお前」

信じられないという風に俺を見つめ返した臨也の、閉じるのを忘れている間抜けな口が面白くて頬が緩む。本当に予想外だったらしく普段では見られないような取り乱した表情が新鮮だ。

「そ、そんなのに使っちゃうの?」
「何でも聞くんだろ?」
「もったないことしてるよドタチン!俺の無駄遣いにも程がある!」
「あーうるせえうるせえ。じゃあ風呂入ってくるからじっとしてろよ」

部屋から出るときに視界に入った臨也の八の字になった眉を思い出しては湯に浸かりながら笑ってしまったことを、少しだけ申し訳ないと思った。













風呂から戻ると、さっきとちっとも変わらない体勢の臨也がベッドの上でちょこんと座っていた。しかし先程と違うのは俺をきつく睨んでいることだろう。

「ちゃんと言いつけ守ってたな」
「…………」

頭を撫でてやっても機嫌はななめのままだ。いつもなら大袈裟なくらい喜んで応じてくるはずなのに。無言を突き通す臨也の全身からは不機嫌オーラが溢れんばかりに出ている。こういうガキくさいところもかわいくない訳じゃない。
細い肩を掴んでゆっくりシーツの上に倒すと、それまで黙っていた臨也が急に狼狽えて暴れだした。

「ちょっ、ななな、なに!?」
「おい、じっとしてるんじゃないのか」
「そうだけど…エッチなのは駄目って言ったじゃん!」
「別にそんな命令してねえよ。俺が指示したのは『大人しくしてる』ことだ」

押し黙った臨也が抵抗を止めて、唇を心底悔しそうに引き結んだ。まさかあの臨也を言いくるめられるとはな。

「……ずるい」
「なんとでも」
「明日朝一で仕事だから終電で帰らなきゃいけないのに…」

未だ納得いってないような臨也がぶつぶつ溢している不平は都合良く無視して、その頬に静かに顔を寄せた。それだけで肩を強張らせて喋るのをやめてしまった臨也の少し嬉しそうな表情を見て、こいつも大概だと思った。お互い人のことなんて、言えない。




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