※当然のように顔見知りな二人
捏造注意チャットでもそうだがこの男、折原臨也はとんでもなく素直じゃない。
俺がちょっと冗談めいたことを口にするだけで、すぐに嫌悪を露にして睨み付けてくるくらいだからな。でもたまに覗かせる寂しがり屋な部分がそれはもう言葉では表せないほど可愛い。だがそんな態度を見せてくれるのはごくごく稀なことで、とても希少価値の高いものだ。
そんな折原と関わり始めてだいぶ経つが、俺に心を開いているのかは未だ疑問である。ただ少し、気まぐれな猫みたいなその性格が俺からしては構っていてとても楽しかったり。
「……九十九屋」
考えを巡らせていると、張本人が俺の名を静かに呼んだ。
30分くらい前にいきなり家に押しかけてきた折原は、今日は少し様子がおかしかった。いつもの勢いがないというかしおらしい雰囲気が漂ってるような。
「どうした?」
パソコンに向かっていた俺は椅子を回転させ、後ろにいた折原に向き合った。
……はっきり言うと俺の部屋はかなり散らかっている。別に埃やゴミだらけとか食べた物がそこら辺に適当に置いてあるとかそういうんじゃないが、とにかく物が散乱しているのだ。定期的に掃除はしているが、どうも小説を書くことに没頭すると生活面がお座なりになってしまうのだ。最近は見かねた折原がよく掃除しに来てくれるのだが、するときは家に入った途端、玄関から掃除をし始めるのでそれをしなかった今日は何か別の用があるらしかった。
折原、物だらけで座る場所がない訳じゃないだろ。どかして座ればいいのに折原は立ちっぱなしだ。そんなに床汚くないぞ。
「九十九屋、俺……」
お悩み相談か?
不安に曇った表情は俺にそう思わせるほどだった。すると折原の細く白い手が俺に伸びてそのまま抱き付かれた。ん?
「俺、最近変で、」
泣きそうな声色に、停止していた思考回路がようやく動き出した。折原からこんなことを、ましてや自分からしてくるなんて今まで一回も無かったことで、俺はひどく混乱した。だがしかし、非常においしい状況である。
「変ってなんだ?」
どさくさに紛れて背中に手を回してみると嫌がる素振りは見せなかった。
「欲しい情報があって、仕事も手につかなくて……」
ぐり、と肩口に顔を埋める折原の仕草が愛しい。一瞬折原をそんな風にさせているその情報とやらに嫉妬した。馬鹿か俺は。つか用って仕事関係か。
時々、直接会って情報を交換することも少なくはない。そういうときは決まって折原から商談を持ち込んできた。
俺からはしない。なぜかって?頼られたいからさ。
下らない理由だが、そのたびに優越感を感じることができ、快感を覚えた。こんな変態くさいこと本人に言える訳ないけど。
「情報ならくれてやるよ?」
「ほんと、か」
そんなすがるような表情されたらねぇ?お前のためなら俺はなんだってするよ。
黒髪を撫でると折原はちょっとの間だけ口ごもったが、やがて思い切ったように顔を上げた。
「お前の情報が欲しくて」
予想外にも程がある。
「ずっと仕事中も考えてた。お前の全部が知りたい」
ありえないくらいデレている。またとないチャンスであるが、この貴重なデレをしっかりと脳内に記憶しておけるほど今の俺に余裕はなかった。
押し倒していいと思う人は挙手をお願いしたい。
好きなのに気付いてないのってすごく可愛いと思います。
そして臨也はこのあと多数決で食べられます。.
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