Main静臨 | ナノ




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これの続きです
やっぱり糖度0%の愛の無い暴力 
ラブラブな静臨はいません、注意して下さい




あれから1年以上経ってようやく俺は仕事を完全に再開した。
あの後目を覚ますと俺は大きな病院に担ぎ込まれていた。人にやられたとしか思えない程綺麗に折られた骨についてひどく詰問されて厄介だったため、最低限の治療だけしてもらって逃げるように自宅療養に入った。それより、てっきり完璧に折られたと思っていた両足はヒビが入った程度だったのが唯一の救いで、わりとすぐに歩けるようになった。だがあの化物が折りそびるなんてことはあり得ない。手加減というものを垣間見た気がして気持ち悪くなった。情けをかけるくらいなら最初からしないで頂きたい。しかし両腕にギプスをしながらの生活はなかなか困難で、この1年で随分筋力も弱まったものだ。
奴には報復したいというより、会いたくなかった。そんなのは池袋に足を踏み入れてしまえば叶わないことだけど。








「久しぶりだなあ?臨也クン」

無事に取引を終えて外に出た途端に雨に降られた。傘を買おうかタクシーを呼ぼうか思案していると、化物に捕まった。

「…やあ、シズちゃん」

サイアク。じくじくと治ったはずの傷が熱を持ち始める。雨を含んだコートはずっしりと重く、身体に打ち付ける雨水に寒気がする。それとは反対に頭の奥は熱くなって、おまけに吐き気もせりあがってくる。

「顔真っ赤だぜ?」
「……近寄らないでくれる?」

じり、と寄られて思わず一歩後退してしまった。怖いだなんてそんなはずは、ないのに。
自分の行動に愕然として足がその場に固まる。俯くと毛先に溜まる雨の粒が視界に映り、それを見つめながら、はやくどこかに行ってくれ、と到底叶わないことを願った。そんな俺の心からの願いも虚しく、しばらくして腕を乱暴にとられた。そのまま引きずられるように暗い路地裏に連れ込まれる。…息が苦しい。これは、熱があるかもしれない。








「いっ、ぅうはあ…っあ゛…ーっやああ」

馬鹿みたいにでかいブツを捩じ込まれるが、中がちっとも馴染むようすはない。ギシギシと嫌な音が聞こえてきそうで身をよじった。あれから1年以上経っているのだ、当然慣れている訳がないし、むしろ初めての時と同じくらいの激痛が走り抜けた。降り注ぐ雨の下、屋根なんてないビルの隙間で立ったまま壁に押し付けられて揺さぶられる。脳みそごとぐらぐら縦に揺れて胃液が押し戻ってきた。

「うえぇ、ああ…ひっ、ぐ!ひぃ、もっと、ゆっくり…ッ」

あっさり捕まって犯されるなんて鈍くさい。抵抗なんかできなかった。あの時みたいに殴られたり折られたりされるのに、ビクついている自分に気付いて情けなくなる。背中をぞくぞくと走る寒気は本当に降りしきる雨によるものなのだろうか。

「はひ、ィ…!っふぁ、う」

腹の奥を強くつつかれて息が詰まる。肌のぶつかる音も塞ぎきれない声も、ぜんぶ雨音に紛れてしまえばいいのに。

「ぁ、っが…、ぇふっうぅ」

口内に長い指が侵入してきて荒々しく中を掻き回す。舌を挟まれて引っ張り出され、唾液と共に嗚咽が漏れた。

「…あちぃな、舌」
「ふ、んん゛…っ、っ」

指の隙間から必死に呼吸し、ぐちゃぐちゃ腹の内壁を擦られて耐えきれない刺激にもがく。幾度も太い杭を打ち込まれ失いそうになった意識が引き戻される。腰を抱え直されて、より深い位置に差し込まれたのが嫌でも分かった。視界は相変わらず不明瞭で、肌は自分でも分かるくらい冷えきっているのに体の芯は熱い。

「はあ…ぁあ゛、おく、っいたい、ひ…ンぅ!ッぁー、ぁああ、」

腰をがっちり押さえつけられ、奥ばかり擦られて痛いくらいの刺激を受け止めるしか術はない。ぐぽぐぽと生々しい音を聞きながら、熱い飛沫が中で吐き出されるのと同時に腰が砕けた。ぐらりと世界が歪んで、地面に倒れるのを覚悟したその時、腕を掴まれて寸前のところで踏みとどまった。

「…早く立て」

ギリ、と力を込められてしまっては、震える膝を叱咤するしか無かった。

「ぅ、けほ、」

ぼやけた世界の中で必死にシズちゃんの顔色を窺う。分からない。理解できない。

「…なんで」

以前呟いたのと同じものが口をついて出た。じっと見つめているとようやく輪郭がはっきりしてきて気付いた。シズちゃんは笑っていない。

「考えてきたか」

覚えている。あの時遠のく意識の底で確かに拾った言葉。こんなことする理由を考えてこい、と宿題を出された。二度と思い返したくはなかったけど、時間があれば嫌でも考えてしまうものだ。

「嫌がらせか性欲処理しか…考えられなかったよ」

口は勝手に言葉を紡ぐ。脳や視界はまだぼやけていて、口とは別の生き物のように感じた。

「…違うな」

見上げると目に雨が入って痛い。仕方なく俯いて目を瞑ると雫が溢れた。

「嫌がらせにしても俺のダメージがでけえし、手前で発散するほど溜まってねぇよ」

立ちくらみがひどくなって塀に背中を預けて楽な姿勢を探す。それにしてもひどい言われようだ。お願いだから死んでほしい。

「じゃあ、何さ」
「知らねえ」

宿題出すんなら答えぐらい用意しとけよ。頭では抗議しているのに今度は反対に口が動かない。全ての動作が億劫に感じ始めて、背を向けてしまった目の前の男を見据えるしかできない。

「…この大雨の中に置いてくの?さすがに死ぬかもよ、俺」

どうにか声は届いたようでシズちゃんの足は止まったが、こちらを振り向くことはしない。そうして雨を含み使い物にならなくなった煙草を、近くにあったゴミ箱に投げ捨てながら言った。

「死ぬかもな。手前、熱あるみてえだしよ」

それから、好都合だ、と最後に付け加えた。身動ぎ一つで中にぶちまけられた精液が漏れ出すのを感じて、あまりの気味の悪さにずるずると座りこんだ。

「シズちゃんに人が殺せるとはね」
「ノミ"蟲"は別だ」


情を湧かせる訳にはいかない、と思っていたがあいつには、はなから情なんてなかった。はずなのに。
じゃあなんであの時骨を折らなかった。なんで今殺さない。考え出したらキリがない。否、化物の考えてることなんて分かりたくもない。
そろそろ身体に降りかかる雨の感覚がなくなってきた。そのまま肌に染み込んで一緒に融けてしまえそうな気がして、俺は奴の背中が見えなくなる前に目を閉じた。



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