三人いれば姦しい


「もう10月よ、パンプキン!」

 家にやってきた三月ウサギを見るなり、アリスは仁王立ちになって言った。

「なに? 南瓜って、あだ名? 所詮わたしなんてカボチャ顔だって?」

 アリスの言動に、三月ウサギはとりあえずツッコミをいれてみる。

「違うわよ、ハロウィンよ。知らないの? 仮装をして、『お菓子をくれないと悪戯するぞぉ〜』って言い合うの」
「そんなに魅惑的な菓子があるんだね」
「お菓子がメインじゃないわ。仮装をする楽しさを満喫するの!」
「ふーん。で? 南瓜は何かに使うの? 海辺で目隠ししながら割り合うとか?」
「西瓜じゃないんだから・・・・・・中をくり抜いてランタンにするのよ。ジャック・オ・ランタンって言って」
「アリスの国はいろいろあるんだなぁ」

 三月ウサギは目をしばたたかせた。せっかくだしね、とアリスはにこりと笑う。

「日ごろお世話になってる『彼ら』に、何かプレゼントしましょ!」

††††††††††

「さーて、本日は忙しい中お集まりいただきありがとう!」
「・・・・・・呼んでくれて・・・・・・ありがとう」
「まぁ、ようは雑用係だよね」
「今日は私たち三人で、帽子屋邸の二人に何かプレゼントをしたいと思います」
「・・・・・・アリスちゃん・・・・・・張り切ってる・・・・・・」
「アレだよね、マイク持たせたらキャラ変わるタイプだよね」
「じゃあ、まずは何を送るか。南瓜を贈っても、いらないわよね」
「花のかんむり・・・・・・いらないかな」
「せっかくだし、何か残るものが良いんじゃない? そういえば、前に眠りネズミがズボン欲しいって言ってた」
「それ・・・・・・いい」
「冴えてるわね三月。服ならいつまででも着られるし、思い出になるわ!」
「おぉ」
「そうと決まったらデザインね。何から始めれば良いかしら」
「・・・・・・型紙作り・・・・・・?」
「そっか、まずは紙を切って・・・・・・面倒だから布を直接切っちゃおうか」
「ダメだこりゃ」
「なによー三月」
「いい? 服は平面じゃない、立体なんだよ。まずは相手にどんな服を着せたいか、どんな服が似合うか、すべてはそこにかかってる!」
「おお」
「って、帽子を作るとき帽子屋が言ってた」
「なるほど。じゃあ、まずは帽子屋さんの服から・・・・・・」

 女子三人の声は、深夜になってもとどまることはなかった。

「痛っ」
「大丈夫・・・・・・? アリスちゃん」
「うん、大丈夫。ありがとう。・・・・・・まあ、芋虫って器用ね。あっという間に縫い上げてる」
「ふぁー、針はあまり慣れてないから、ちまちまして疲れるなぁ」
「う、三月はゆっくりだけど確実に綺麗に縫えてる」
「アリスはどんな感じ?」
「お腹空いたね、何か持ってくるわ」
「逃げるなこらー」
「私・・・・・・紅茶・・・・・・飲みたい」
「すぐに持ってくるわ!」

 彼女たちの声は、鳥たちが目覚め出す時間になっても、とどまることはなかった。

「もう少しよ、三月! 頑張って、芋虫」
「芋虫ー、はい。裁断終了っ」
「あとは・・・・・・これをくっつけて・・・・・・」
「ファイトよ二人とも! あ、包装紙を用意しなきゃね」
「いやー、言い出しっぺのアリスが一番裁縫できないとはねー」
「誰だって得手不得手はあるわ。袋の飾り付けは任せて!」
「できた・・・・・・カボチャパンツ」
「やったわ芋虫! 完成よ!」
「急いでアリス。もうお茶会の時間になるよっ」
「袋に入れるから待って! あたしの特技を披露させてっ」

アリスは急いでリボンをかける。左右均等になったリボンは、故郷で培った練習の賜物だった。

「上手・・・・・・アリスちゃん」
「そんなリボンすぐにほどいちゃうのにさ」

言いながら、三月ウサギは玄関の扉を開けた。
三人が用意したこのプレゼント。・・・・・・どんな内容かは受け取った『彼ら』が知っている。




End




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