―trick or …?―


『trick or treat!』


その日はそんな元気な声から始まった。













―trick or …?―



それは肌寒い朝。珍しく早起きしたアリスの開口一番の一言。
アリスはとても明るい笑顔を輝かせながら、三人の前に両手を差し出した。
いつのまに用意したのか、黒い帽子とマントをつけて魔女のような格好で。


「トリック・オア・トリート!」


そしてもう一度先ほどの言葉を繰り返す。
まるで何かを急かすように。


「はい」

「どーぞ、アリス」


一瞬の間をおいて、レインとチェシャ猫は可愛らしくラッピングされたお菓子をアリスの両手にそっとのせた。
おそらくレインの渡したお菓子は手作り、チェシャ猫は店で買ったものだろう。
アリスは手の上の物を満足そうに見つめる。


「ハッピーハロウィン!」


アリスは自分の服のポケットからアメ玉を二つ取り出すと、二人の手にきゅっと握りながらアメ玉を渡しにっこりと笑った。


そう、今日はハロウィンなのだ。
お菓子か、イタズラか、その二択のうちどちらかを選択する日。


皆前日からお菓子や衣装を用意して今日という日を楽しみにしていた。


アリスはくるりと方向転換してライルの方に向き直った。
唯一お菓子を出していないライルの方を。


「トリック・オア・トリート?」


アリスはもう一度魔法の言葉を繰り返す。しかし今度は疑問符をつけて。


「…あー、え…っとだな…」


ライルは一歩後ろに下がり歯切れの悪い返事を返す。
汗を浮かべた笑顔は心なしか引きつって見える。


「もしかして、用意してないの?」


レインのその一言で、ライルはギクッとした。もともと浮かべていた汗は滝のようにダラダラと流れる。
それは、用意していないという答え。
少しの沈黙のあと、アリスが小さく口を開いた。


「じゃあ…イタズラ?」

「え!?」


ライルを見つめたままのアリスはそう小さく呟くと、また笑顔を浮かべた。
ただし、今度は悪だくみをしているような、よからぬ事を暗示するような、そんな笑顔を。


「そうだね、イタズラだ」

「お菓子持って無いんだものね」


すかさずチェシャ猫とレインがアリスに同意する。楽しそうな二人の笑顔は、一瞬でライルを不安にさせた。


「ち…ちょっと待て、お前ら一体何する気……」


たじろぐライルに三人はじりじりと詰め寄る。ライルはついに壁まで追い詰められた。


「なにって…ねぇ?」

「決まってるでしょ」


ライルの静止など聴こえない。
壁に追い詰められたライルに三人の影が重なる。


「お菓子くれなきゃ、イタズラだよね?」


そのアリスの一言を合図に、悲痛なライルの叫び声が朝の空に響いた。









そう、今日はハロウィン。


お菓子をあげないと、イタズラ、されちゃうかもね?





…END.

†††††††††††††††
ハロウィンに、フリー小説いただきました!
・・・・・・ライル君がどんないたずらをされたのかかなり気になります!!(笑)
アリスちゃんは意外といじわるっ子でしたね☆可愛くてほのぼのさせていただきました(〃ω〃)
久々に小説を頂いて、彬としてもかなり嬉しいです!! 蒼空さん、ありがとうございました!!!




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