「……ちょっ!!隆文、私のアイス食べようとしないでよ!」
「いいだろーんなこと、気にすんなよぉ。俺たちの仲だろー?」
「そう……だよね……」
隆文には聞き取れないであろう、小さな声で呟く。
“俺たちの仲”って言っても私の求めている仲ではない。
私の求める俺たちの仲は恋人の関係。
隆文の言う仲は友達、もしくは親友。
それ以上でもそれ以下でも無い。
あぁ、なんて悲しいんだろう。
「なぁ、名前?………名字名前さーん?」
「え?あ、うん。何でも無いよ!!」
「……ん?変な奴だなぁ」
「バカ文の癖にそんなこと気にするなって!!」
「なんだとぉ!!!」
隆文はそう言って私の髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。
「もう!!ぐしゃぐしゃにすーるーなー」
「ははは!!悪ぃ悪ぃ」
隆文は楽しそうに笑う。
「はい、髪の毛直すからアイス持ってて」
隆文にアイスとカバンを渡す。
隆文に背を向け、ポケットから櫛を取り出して髪をとく。
ふう、と息をつくと違和感を感じる。
………隆文、静かだなぁ。
「静かすぎない?」
私は言いながら振り返ると………バカ文が私のアイスを食べていた。
現在進行形で。
「…………あ」
「ちょっとおー!なに、
“あ、バレちまった”見たいな顔してる訳!?人の大好物食べるとか本当にあり得ない!!!」
「良いだろ〜俺、イチゴも食べたかったんだよ〜」
そう言ってまた一口私のアイスを食べる隆文。
「さっき“俺はソーダがいいんだ!!ソーダ以外食わねぇ”とか言うからソーダ譲ってあげたのにさぁ」
「はははは!!ま、気にすんな。やっぱりカップアイスはいいなぁ〜俺も棒じゃなくカップにしたら良かったぜ」
「もうっ!!」
頬を膨らます私に隆文はアイスを差し出す。
「ほら、食え」
「だーかーらーそれは私のアイスなんだ……か…ら」
ん、ちょっと待て。
カップアイス=スプーンで食べる。
私が使ってからの隆文が使いーの、私が使う!?
か、かか間接キス!?!?!?
「どうしたんだ?顔、真っ赤だぞ?」
「ううう煩いバカ文!!早くアイス渡せ!」
ほら、隆文は動揺の一つさえしない。
これが現実で隆文との温度差なんだよ。
叶わない恋をしてるっつー訳で。
「なにボケッとつっ立ってんだよ〜置いてくぞ〜」
「ま、待ちなさいよ!」
今はこれでいい。
今は今なんだ。
私は今を楽しもう。
…………なんて、隆文とふざけあっていたのが数ヶ月前。
「隆文、あのね」
「ん?どうかしたのか?」
隆文の声がえらく冷たく聞こえる。
あれから私と隆文が会うことは急激に減った。
会っても挨拶程度。
元々、クラスも違うし私も私で彼も彼並みに忙しいのだから仕方は無いのかも知れない。
「ねぇ、隆文………隆文は好きな「言うな」」
拒絶。言う前の拒絶。
でも、ここで引く訳にはいかないの、ケジメはつけなきゃ。
「俺はお前と友達のままでいたいんだよ……」
私だってそうよ。
ずっと友達でいたかった。
ずっとバカやって楽しくいたかった。
だけど………この想いは止まらないの。
「………わかってる!!!そんなことわかってるの!だけどお願い……これだけ言わせて………好きです。ずっと大好きでした。」
「………ごめんな。やっぱり俺、お前とそう言う関係にはなれない」
隆文は優しいね、わかりきっているのに、返事を求めてないのに。
「……うん。わかってる。ありがとう、ごめんね」
「………じゃあな」
隆文は私に背を向けて歩き出す。
“行かないで。だったら、これからも友達でいて”
って、言えたら叫べたら
どれだけ良かっただろう
もう戻らないあの日々
(涙が溢れた)
(叶うなら、)
(あの頃に戻りたい)
■あとがき
異様に長くなりました。
犬飼っぽくなっていないだと……orz
好きなんだけど難しいね。
でも、書いてて楽しかったです!!
もっと特訓しなくては。
読んでくださった
犬飼好きの皆さん!!
ありがとうございました!
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