・はじめてのえろほん 子供の成長とは早いものだ。 もうずっと長いこと、部屋の主を差し置いてテレビを占領し、新作のテレビゲームに熱中している少年の後姿を眺めながら、ユウリはぼんやりとそう思った。 「空条くん」 「…」 「空条くん」もう一度、呼びかける。 「何だよ」 何だよ、とはなんだ。 出かかった言葉をぐっと飲み込んで、ユウリは承太郎の隣に移動した。すこし前まで、ユウリより低い位置にあった彼の頭は、今ではもう、彼女のそれを追い越さんとしている。 まだ中学校に入学したばかりだというのに、彼の成長の速さときたら、彼の同級生たちと比べてみても、文字通り、頭ひとつ飛びぬけている。変わらないのは、生意気な口ぶりとトレードマークの学帽くらいだ。 「ねえ、空条くん。もう6時だよ。そろそろ帰らないと、親御さんが心配するよ」 「心配って、家なんざすぐそこじゃあねえか」 「…まあ、そうだけど」 ユウリはそれ以上続けなかった。ユウリも別に、承太郎に早く帰って欲しいと思っているわけではない。家主をほったらかしにして、ゲームに没頭しているこの少年が、なんとなくおもしろくなかっただけなのだ。 新作の格闘ゲーム、そのプレイヤー選択画面を見つめながら、ユウリは「つまらないな」と溜め息を吐いた。 と、そこで、投げっぱなしにされている承太郎の学生鞄からのぞく「あるモノ」に気がついた。 明らかに教科書ではない、大判サイズのその雑誌。手に取ると、表紙を飾る半裸の女と目が合った。そこそこの顔立ちの女を、もっとも美しく見えるような角度から撮影した写真であった。 …どうして空条くんがこんなもの。 中学生の鞄の中になど、あってはならないそのポルノ雑誌を呆然と見つめる。 …。見なかったことにしよう。 そう思い、ユウリは鞄に雑誌を戻そうとする。 が、それよりも先に、 「…てめえ。何してやがる」 斜め後ろから声が掛かった。テレビ画面には【GAME OVER】の文字。まるで自分に向けられているかのようだとユウリは思った。 「てめえ…ヒトの鞄を、勝手に」 激昂する少年に、ユウリは怯みそうになる。 「ご、ごめん。これが見えちゃって、つい」 でも、どうしてキミがこんなものを。そう問えば、間髪入れずに承太郎は言った。「クラスの奴に押し付けられたンだ」 彼が言うには、クラスの男子の間でこの雑誌が回し読みされているらしく、今日、ついに承太郎のところへまわってきたのだという。 なんでも、承太郎はかたくなに拒んだらしいが、いいからいいからと無理やり押し付けられたらしい。ユウリは「へえ」と興味深そうに相槌を打った。 「最近の子供は進んでるんだなぁ」承太郎の方を見ずに、うんうんと頷く。「ところで空条くん、読まないの?」 「誰が読むか。興味もないぜ」 「…へえ?」 そんなふうに言われると、読ませてみたくなるのが人の性。ユウリの中にむくむくと悪戯心が芽生えてくる。彼にこの雑誌を押し付けたというクラスメイトたちも、きっとこんな気持ちだったに違いない。 ユウリはゲーム機本体の電源を切り、承太郎の手を引いた。 「ま、いいじゃあないか。いずれキミも知るコトだ。一緒に見ようよ」 ね、と笑って、ページをひらく。握りしめた手の中で、承太郎の指先がわずかに強張るのがわかった。 「…わ」ユウリの口から、上擦った声が出る。「結構過激だね」 ページの中では、整った顔をした若い女たちが、裸で四つん這いになっていたり、下着姿で挑発的なポーズをとっていたりと、なんとも艶めかしい姿でこちらを見ていた。 欲を煽ることを目的とした、極めてスタンダードなエロ本といえる。こんなものは、もう、承太郎くらいの青少年にはたまらないというか、刺激が強すぎるのではないだろうか。むしろこのまま読み続けていたら、ユウリの方がヘンな気分になってくるかもしれない。 それはマズイなと内心ひやひやした。しかしユウリが何か言うより先に、承太郎が「いい加減放しやがれ」とユウリの手を振りほどいた。そういえば先ほどからずっと握ったままだった。 「おもしろくねえ!全然」 承太郎はユウリに背を向けると、荒っぽい口調でそう言った。どうしたんだ、と覗き込むと、真っ赤になった承太郎の顔と、盛り上がったズボンの中心部が視界に飛び込んでくる。ユウリはあっと声を上げそうになった。 「空条くん。キミ…」 ユウリは生唾を呑みこんだ。承太郎は「うるせえ!」と涙目で威嚇してくる。 「寄るな!ジロジロ見てンじゃあねえッ」 そう怒鳴ると、承太郎はまたプイとそっぽを向いた。恥ずかしいものを隠すように、上着のすそをぎゅっと引っ張り、俯いている。 …まずい。これは非常にまずい。イタズラ半分にエロ本など見せてしまった自分が悪かった。ふだん、突っ張っているとはいえ、承太郎も多感な年ごろだ。こんな雑誌を読めばそりゃあ勃起もするだろう。 この現状をどうしていいかわからず、ユウリは「え、えーと…」と表情を引き攣らせた。 「く、空条くんも、もうそんな年頃だもんね。…えーと。あ、そうだ。お姉さんが教えてあげようか?なーんて…」 はは、と渇いた笑いを零すユウリ。 困ったように首を傾げる年上の女を、承太郎は思い切り睨み上げる。「てめえ」 「やれるもんならやってみやがれ。ビビってるくせによ」 その言葉に、ぴく、とユウリの肩が反応する。「なんだって?」 ユウリの中でゆらめく炎が大きくなる。その炎に反比例して、先ほどまでの弱気が小さくなってゆく。まさに売り言葉に買い言葉、気づいた時には吹っ切れていた。 「言ってくれるね、空条くん」承太郎の顔を下から覗き込むようにして、言う。「ちょっとエロ本見ただけでこんなにしているくせに」 そう言って、ユウリは承太郎の体の中心部に手を這わせた。 「腰が引けてるよ」 「何しやがるっ」 承太郎は身を捩って逃げようとするが、触れられた部分から広がる柔らかな痺れに抗いきれず、中途半端にユウリの襟首を掴むだけだった。 カチャ、とベルトの金具が外れる音がする。ユウリはズボンを脱がしながら、「キミが私を怒らせるから」と低く笑った。 「お、怒ってンのか」 「どうかな」ユウリは目を細めた。「それに、キミだって、どっちみち帰れないでしょ。こんなガチガチにしちゃってさ」 クスクス笑っているが、ユウリは目を合わせない。手早く下着を取り払い、こぼれ出たそれを手のひらで優しくこすり上げる。 「へえ、もう剥けてるんだ」 つまんないなァ、と、そんな言葉とは裏腹に楽しそうな声。 「…ッ」承太郎はぎゅっと唇を噛んで声を殺した。 「一人エッチはしたことある?自分でするのと、他人にしてもらうのとじゃあ、けっこう違うもんでしょ」 気持ち良いでしょう、と、手を上下に揺すりながらユウリが問う。彼女は美しい瞳をしている。色素の薄い神秘的な瞳、その中に映った自分の姿に、承太郎は息を呑んだ。そこには恥ずかしげもなく、気色ばんだ目でこちらを見ている少年がいた。 なんてカオしてやがる、情けねえ。そうは思うが、自身を突き上げる快楽と劣情の波に、まだ幼い彼の理性はとても敵いそうにない。 「…っ、ふ」 唇が震える。力んだ尻が痛い。今、体じゅうのどこよりも血の集まったペニスは、ユウリの手の中でちゅくちゅくと恥ずかしい音を立ててひくついている。 ユウリの手のひらは温かく、柔らかだった。すこし強く扱かれただけで痺れるような快感が奔った。 承太郎は、なぜ自分の性器がぐっしょりと濡れているのか不思議だった。見れば、先端部から透明なしずくが滲み出ている。なんだこれは。まさか漏らしてしまったのだろうかと不安になった。 「こんなにドロドロ。すごいね、空条くん」 そう言って、ユウリは片手でペニスを扱き、鈴口の部分をもう片方の指先でくりくりとくすぐった。途端に排泄感のようなものが湧き上がり、承太郎は「うあ」と腰を浮かせた。ずる、と何かが尿道を通り過ぎていった。ユウリがきゃっと小さく喘いだので、そちらを見やる。濁った粘液のようなものが、彼女の頬にこってりと飛び散っていた。 「やってくれるね…」 「はぁ、はぁ…」 ティッシュで顔を拭いながら、苛立ったようにユウリが言う。なにか言い返してやりたいが、射精による気怠さで、そんな気力も湧いてこない。初めての射精。精通の瞬間だった。 「気持ちよかった?」つん、と人さし指で性器にふれる。「もうすっかり大人しくなっちゃったね」 くったりと力の抜けたペニスだったが、指でくにくにと弄ばれるうちに、硬さを取りもどしはじめる。完全に勃起するまで、そう時間は掛からなかった。 「空条くんはエッチだね」ユウリは、張り詰めたペニスに息を吹きかけると、ちょんと先端をはじいてやった。 「…ッ」 声を出そうとしない承太郎に、ユウリは微笑む。「つらそうだね?」 「サービスしてあげるから、自分で扱きなよ。見ていてあげるから」 そう言うと、ユウリはスカートをめくり上げた。レースのたっぷりとあしらわれたミントグリーンのショーツ。割れ目の部分がよく見えるように、片足を立てて座りなおす。 「お、おまえ」 頭がどうにかなったのか?と憎まれ口を叩きながらも、承太郎はペニスにあてがった手のひらをゆるゆると動かしはじめた。ぎこちない手つきがいとおしい。 うっすらと涙の滲んだ碧の眼が、蕩けるように自分を見ている。承太郎の、恍惚の眼差しに射とめられ、ユウリは下半身が熱くなる。じんわりと薄い布地が濡れていくのがわかった。 「はぁ、…ぁ」 熱い吐息を吐き出しながら、小刻みに手を動かす承太郎。 彼の熱が移ったように、うっとりと目を潤ませて、ユウリは彼の手を制止した。「ねえ…」 「せっかくだから、この本と同じようなコト、してみよう?」 そう言うと、ユウリはブラウスのボタンを外しにかかる。焦らすようにゆっくりと。待ちきれないといった様子で、承太郎は赤い舌をちらつかせている。 「ねえ、見て」 ブラウスの前を肌蹴させ、プチ、とブラジャーのホックを外す。ぱつん、と苦しそうに、豊かな乳房がこぼれ出た。承太郎の喉がごくんと大袈裟に上下する。 ひらかれた本のページには、ユウリと同じ、いや、それ以上の大きな乳房でペニスをはさみ、悩ましげな表情を浮かべる女性の姿。これから、この写真と同じことをされるのだと思うと、承太郎の雄は、緊張したようにびくんと大きく脈打った。 「ん…」ユウリが鼻にかかった声をもらす。 手のひらとはまた違う、しっとりと柔らかな肉に、張り詰めたペニスが埋まっていく。ユウリの谷間は、先走りの汁であっという間にベトベトになった。 「あは、先っぽが出たよ。可愛いね」 大きな胸を両手で押さえながら、ユウリは、谷間から顔をのぞかせた先端部にキスをした。赤々とした先端からは相も変わらずカウパーが滲み、ユウリの肌をだらだらと汚している。 それを舐めとるように、ユウリの舌がカリ首や尿道の入り口部分をチロチロとなぞる。「ん、くっ」びくびくと腰が跳ねるのを、ユウリは可笑しそうに見上げた。そんなふうにペロペロ舐めまわされながら、上目づかいに見られるとたまらない気持ちになった。 ユウリが両手を器用に使い、乳房をこねまわす。膣とはまた違った動きでペニスを刺激し、射精を促す。 「はっ…、ぁ…」 額に、首筋に、汗が滲む。ユウリの乳房も指先も濡れた舌も、何もかもが気持ちよかった。「…も、ダメだ」漏れる、と思った。気づいた時にはユウリの白い乳房に射精していた。 「あーあ。またこんなに」 呆れたようなユウリの声を、どこか遠くに聞いていた。なにも考えられなかった。 承太郎は、ハァハァと息を荒げていたが、やがて呼吸が整っていくにつれ、思考も鮮明になっていく。 一度ならず二度までも、排泄物を彼女の身体にひっかけた。もしかしたら自分は、ものすごい粗相をしたのではないかと不安が過ぎる。 「………なあ」すこし拗ねたように、承太郎が言った。「怒ってるか」 汚れた胸元を綺麗にふき取っていたユウリが、その言葉に目を丸くする。 …あの生意気なガキんちょが、ずいぶんしおらしくなっちゃって。 思いきり可愛がってやりたい気もするが、それはまた次の機会にしておこう。ユウリはそんなことを思い、冗談めいた口調で言った。「どうかなぁ」 了 2013.11.26 |