09.悩む(メローネ)

 メローネは悩んでいた。

「メローネ、助けて! プロシュートがセクハラするの!」

 ひんひんと情けない声で助けを求めるのは、最近このチームに配属になったばかりの新人だ。メローネが教育係としてバディを組んでいる。

「はいはい、バンビーナ。プロシュートがなんだって?」
「あのね。もうメローネとヤッたのかって」

 胸元にすり寄ってくる小柄な女の髪を撫で、メローネは「ははぁん」とプロシュートに笑いかけた。

「プロシュートぉ、やめろよな。そういう下品なこと、コイツに言うんじゃねえよ」
「オイオイ、マジかオメー」

 プロシュートは思わず半笑いで「ゲェ」と舌を見せた。なに猫かぶってやがる、と続ける。

「人聞きの悪いコト言うなよ。コイツが勘違いするだろォ?」
「メローネ。ネコかぶってるってどーいうコト?」
「あぁイヤ、お前は気にしなくてイイぜ。お前はホントに素直でカワイイなァ」
「うふふ。メローネ、優しいから大好き」

 ―――大好きだってよ!
 プロシュートは大笑いしそうになるのをこらえた。メローネはどういうわけだか、この新人の前では『教育熱心な良い先輩』であろうとする。その甲斐あって新人はいたくメローネに懐いていたが、ここにきて問題が浮上した。

「メローネ、私ね、一人前になってもメローネと一緒に組んでいたいな」
「ああバンビーナ、俺もだよ。一生面倒を見てやりてえくらいだ」
「いやメローネ、お前それいつか本性バレるぞ」

 プロシュートの言うとおり。己の欲望を閉じ込めて、イイヒトぶるのは限界がある。そして何より、この女に、自分の本当の姿を見て欲しくなったのだ。
 恋とは不思議で、悩ましい。メローネは新人の若いバディを胸に抱き、妖しく笑った。プロシュートだけがそれを見ていた。




2019.05.24

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