03.諦める(わんこジョルノ)
「起きてください」
「うぅ…ん」
「起きてください!」
「むりぃ……。あと3時間…」

 そう言って頭から毛布をかぶり直した。
「ちょっと!!」ジョルノがゆさゆさと身体を揺さぶってくる。「いったい何時まで寝るつもりですか!!」

 ジョルノには悪いが、今日は日曜日だ。しかも時刻はまだ朝の5時半。
 本音を言えば、休日の朝くらいゆっくり寝かせて欲しい。しかも今週は土曜日も出勤だったのだ。愛犬のためとはいえ、人間の三大欲求のひとつである睡眠は捨て置けない。

 そうこうしているうちにジョルノが静かになったので、やっと諦めてくれたかとほっとする。あと3時間、というのはさすがに冗談だが、せめてあと1時間は眠らせてもらおう。

 …しかし。

「起きてください…」

 きゅぅん、と鼻を鳴らして、ジョルノが毛布にもぐりこんできた。
 おでこを私の胸元に押しつけて、しきりに私の名前を呼ぶ。

 起きてください、寂しいです、ぼく、今週もひとりでお留守番がんばりました。ねえ、大好きです。


 ―――あーもう!!!
 ジョルノにここまで言われて、おとなしく寝ていられるわけがない。くそ、かわいいやつ。

「わかったわかった、ジョルノ…」

 上半身を起こすと、間髪入れずにジョルノが抱きついてくる。髪や耳が肌をかすめてくすぐったい。

「もう、ジョルノ。こんなに早起きさせて、どこか行きたいところでもあるの?」
「いいえ。あなたと一緒なら、なんだっていい。今日はもう離しません」
「そんなのいつもでしょ」
「ふふ。あらためて言いたくなっただけです」
「なにそれ! カワイイ」
「僕の可愛いところ、もっと教えてあげますよ」

 ―――だから早くベッドから降りて。
 耳元で囁かれて、思わず震えた。

 私の貴重な日曜日の睡眠時間はこうして終了した。




2019.05.07

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