「吹雪先輩、すきです」

俺がこう言うと決まって先輩は困った風にわらう。それで、だからね雪村、なんて一言を皮切りに、道徳の教科書にそのまんま載れるんじゃないかってぐらいの、長い長いお説教をする。


吹雪先輩は大人だ。そりゃあもう俺よりもずっとずっと大人で、だから言葉を道をたくさんたくさん持っている。たくさんの選択肢が見えるからたくさんの答えが出せる。多くのことを考えられる先輩からしたら、俺の行動や思考なんて軽率で浅くて、息を吹き掛けたら消えてしまうくらいには呆気なく見えてるんだろう。
でも俺は、先輩とは違う。子供だって言うならそれでも良い、俺は子供だから、子供だからひとつしか見えないしひとつしかわからない。でも俺にとってはそのひとつが、他のどの選択より遥かに秀でていて、これが一番だって胸を張って言えることなんだよ。よく考えてみて、って先輩は言うけど、俺だってこの思慮浅い脳味噌で考えられるだけ考えて、それで出した結論がこれなんだよ。思い違いじゃないし可愛い女の子に告白されたって吹雪先輩と一緒にいる時程どきどきしなかった、誰に何をされるよりあんたにわらってもらうことの方がずっとずっと嬉しいし幸せなんだ。だから先輩こそ、そんなたったひとつの選択、俺を説き伏せることにばっか執着してないで、少しは俺のことを受け入れてくれませんか?


「吹雪先輩、すきです」
「だからね雪村、」



【開かない扉】

─────────
みやこ氏へ、お誕生日おめでとう!