窓から射し込む日差しで目が覚める。まだ鳴っていない目覚ましは喚く前に切って、身体を伸ばして大きく口を開けた。と、腕の先に何かが当たった気がして、微かにだが霧野の脳は覚醒する。覗き込んだ布団の中には乱れて散った青い髪。

「………お前な」

完全に、眠気が飛んでしまった。それとは対照の、すぅすぅと規則正しく零れる寝息が恨めしい。こっちはお前のせいでせっかくの微睡みが台無しだというのに、霧野は朝一番の溜息をついた。
どうせ起きたらまたこれは違うんだと、怖い夢を見ただのホラー映画を見ただの朝から言い訳を喚き散らすのは目に見えている。まだ静かな朝にそのやり取りは気が重い。仕方なく霧野は起こさぬよう音を立てずにベッドから抜け出して、拍子にずれた毛布を掛け直してやった。まったく自分の甲斐甲斐しさに涙が出る。

「…ぅ〜………」
「う〜じゃないよ、まったく…」

首元近くまで上げた毛布が重いのか寝苦しそうな声を上げた狩屋に聞こえないだろうに言い返す。冬の朝は寒いのだ、風邪を引かれては困る。
しかしなおも気難しそうな表情を浮かべる狩屋に、しょうがないな、と額に唇を落としてやった。眉間に寄った皺が段々と緩んでいく様子に霧野の頬も緩む。
霧野は再度立ち上がったまま身体を伸ばした。時間が経てば狩屋も起きるだろうがなかなか寝起きの悪い彼のことだ、起きなければさてどうしようか。そうだ、今度はその口に唇を寄せてやろうか。
小さく笑みを零しながら洗面所へと向かう。


時刻は朝7時を回ったところ。
まだまだ一日は始まったばかりだ。



【眠り姫はまだ起こさないで】

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お茶会短文をちょっとだけ修正
うちのサイトならこの長さで十分に更新出来るんじゃないかと思いそのまま使っちゃいました(笑)
一応設定は同棲蘭マサなんですが、よく考えたら貧乏生活にベッドは…ありませんよね…