(泣いてなんかない泣いてなんかない泣いてなんかない)
歯を食いしばってカツカツと廊下を歩く。魔力探知である人物を探しながら一心不乱に目的地を目指す。多少着衣が乱れていようとも気にしてなんかいられない。がらりとドアを開ければ目当ての人物がこちらに振り返る前に思い切り背中にしがみついた。

「どうした。」
「うるさい黙って背中貸せ馬鹿野郎が」

ぐっとしがみつくようにして鼻をすすれば「またないてんのか」と溜息を疲れて目頭がちょっと熱くなって思わず「ないてないもん…」と返してしまう。我ながらひどく情けない声が出た気がしたがきっと気のせいだ。

「お前もうちょっと自分のクラスの生徒の手綱握っとけよこの駄目教師が2の3のほうがもうちょっと理性的だぞ…」
「あ?一応うちのクラスは隣より大分ましだと思うぞ」
「うそだ。だって」


「ろ、廊下で、強姦しようと、する、とか」












「ノアァァァァァアアアアアルッ!!!!!!!!!!!」

パァーンと教室のドアが勢いよく開くとともに呼ばれた声に視線を上げれば、隣のクラスの担任が友人を背負って息を荒くしてこちらを見つめているという珍妙な光景に思わず眉をひそめた。


「何事だ騒々しい。」
「お前四巡の手綱ぐらい握っとけよ!!!!」
「ついにこいつにも被害出たぞ」と背中に背負っているの友人を見せつけてきてああまたあいつなんかやったのかとため息をつく。
「なんだ、尻でも触られたのか。生憎あいつはどれだけ言っても聞かなくてな」
「ことはそんな軽くねーんだよ」
「…あれは何をした」
「廊下で手籠めにされそうになったんだとよ」
「  」



おいこいついまなんつった。




「しかも大衆の面前でだ」
その瞬間サッとクラスメイトの何人かが顔をそらすのを確認した。
あまりのことにめまいを起こしかけたが頭に手をやってごまかす。
なんとなく襲われた理由は察しが付く。彼が人ではないと気づいてしまい、人ではないものが人の形をどこまで模してどのようになっているかという単純な知識欲と好奇心からだろう。
確かに公共の場で姦行を行うのはよろしくない。少々しかりつけねばならんなとノアールが席をたとうとした時である。


「一応言っとくがこいつ処女だぞ」
「なん だと…」



その瞬間小さく猫の背の上から「しにたい」という声が上がったが二人の耳には一切合財聞こえていなかった。


一般生徒には何をあたりまえなことをというか何でそこで驚くんだよていうか処女じゃないと思ってたのかとノアールと猫を見つめ、ある種特殊な知識をもつものはあぁそれはかわいそうだなぁみたいな顔をして背中にへばりついているイリューを見つめた。
特殊性癖がない限り男性ならば処女なのは当たり前で、まぁそれを奪われるというものはとても恐ろしいものだと大半の人間が理解している。
ただしここでの二人しか知らない副音声的知識が流れたのはだれにも気付かなかった。

悪魔というものは人の生成エネルギーを食べるものである。友人が食べるのは主に感情エネルギーだが一番直接的に摂取する方法としてが体液の摂取であり、それを簡単に済ます方法は物理的に人を食べるか性的に人を食べるかの二択である。具体例をあげると猫市が飼っている影だろう。
そしてこの友人は悪魔である。性格的に人を食べるなんていうことをしないという事は分かっていたが正直言うと性交ぐらいはしてたんじゃないかとノアールは考えていた。ましてや本来の姿は多く効率的に摂取しやすい少女体である。ぶっちゃけ非処女だと思っていましたごめん。
ここで弁解すべきは彼はもともと人間の少女が様々な要因が重なって悪魔になったものである。無論倫理観の大半は人間の培ってきたもので、ついでに言えば享年はここにいる学生と大差ない。
そしてそんな年齢の女子といえばやっぱりはじめては好きな人にという思考が働くのは当たり前のことである。死んだ者の時は進まない。ていうか割と彼はロマンチストというか乙女思考というかなかなか純粋培養な思考を持っている。ましてや精神概念体に近い性質を持つものである。性的な意味で襲われるなんて思考はすっぽりと抜け落ちていた。ここで男性体でいるのは単純に本体を知られなめられないための手段の一つである。そんなある意味近年の幼子以下のレベルの警戒心しかない(元)女子にいきなりア○ルフ○ックとかやろうものならそれはもう、その、なんというか、そこらのロリコン性犯罪者と大差ないのではないのではないだろうか。


「よしちょっとアイツぶっ飛ばそう」


おもむろに立ち上がったノアールの結論は奇しくも先ほどの猫と同じ物だった。
キャラブレなんてもはや気にしない。一応ぶっ飛ばす許可を取りに来た猫は「よし!!」といってすぐターンをした。
目指すは2−2。四巡がいる教室である。









「しにたい」
「つらい」
「もうやだ」
ぐすぐすと泣きそうな声をあげてしがみつくイリューを慰めながらカルラは途方に暮れていた。
ものすごい覇気をまとった猫とノアールが四巡を連れていったのはつい先ほどのことであり代わりに見知った先輩を押しつけられたはいいものの先ほどからなんか背中にへばりついてはなれない。

「先輩一体どうしたんですか」
「ただ消えたい」

まったくもって答える気がない返答に溜息をつけば事の内容を調べてくるといった猫市が帰ってきた。帰ってきたはいいが何というかその非常に微妙な顔をしていた。

「なにかわかった?」
「いや、うん。なんというか…」

「これ見ればだいたいわかると思う」と、渡されたケータイの画面を確認すれば、なんとも言えない写真が写っており、一瞬で事の顛末を理解してしまった。反射的に「四巡しねばいいのに」という声が出てしまったのはご愛嬌である。

「先輩、大丈夫でしたか?」
「なんかもう…」
「…?」


「なんかもう

 世界なんてどうでもいい…」


「うわぁぁぁあああああ末期ぃぃいいい!!!!」



その瞬間どこかの世界線の楔が派手に音を立てた事なんてカルラには知る由もなかったが、さすがにこのメンタル状態はやばいということは理解した。
なんてったってノアールが認める世界維持のために派遣されてきた悪魔。いつか彼は言っていた。悪魔は時間感覚がとてもいい加減であると。その悪魔の中で一番人間的思考と感覚を持つのがいまへばりついてる彼である。いまここで彼が仕事を投げ出してしまえばほかの悪魔がくるのはいったいいつになることなのだろうか。ていうか普通にこないかもしれない。そうなれば私達が住んでいるこの世界はどうなるのか。



その時カルラは世界の命運が自分の双肩にかかっていることを感じた。




「だ、大丈夫ですよ!!ほらいま猫先生とノアールが四巡絞めてくれてますんで!!」
「三人とも死ねばいい。」
「悪化した?!なんで?!」

それは校内を背負われたまんま走り回る羞恥プレイと隣のクラスで処女云々いろいろ暴露されたからであるが、その下手人であり暴露の意味を正しく理解している二人は今頃校舎裏で人体を締め上げているためカルラ及び一般生徒にはまったく意味がわからなかった。


「ええとええと…ほら先輩!!ここに四巡の財布があるんですけどなにか食べたいものありませんか」
「たべもの…」
「そうですよ!!所詮四巡の財布なんで好きなだけ気にせず好きなものいっていいんですよ!!」
「じゃあ…ガリガリくん梨味…」
「安いなおい」

思わず反射的にツッコんでしまったその瞬間、肩にかかる体重がそのままの体勢で消えかけてるのを察知して「嘘です嘘ウソうそ!!!!ガリガリくんおいしいもんね!!!!この前たべた梨味おいしかったもんね!!!!」と即座にフォローしたカルラを見て猫市は泣き出しそうな子供にたいして必死にフォローしている保育士を幻視した。よし次の新刊は幼児化ネタに決定だなんて考えてるあたり手伝う気は皆無である。


「…あんまり高いのたのんじゃ可哀想だなって…」
「先輩貴方どんだけピュアなんですか!!先輩アイスだったらケーキ食べましょうケーキ!!サーティワンの!!あのなんかでっかいアイスケーキ!!」
「前食べたいって言ってましたよね!!」と声をかければ背後から「けーき…」と小さく声が聞こえてくる。「ええそうですよアイスケーキですよアイスケーキ!!ワンホール食べていいですよ!!」と追撃すればすがりついていた腕がゆっくりとゆるまっていく。
「カルラちゃんも、一緒がいい」
「ええもちろんです一緒に行きましょう。」
「猫市ちゃんも。」
「今日は無理だけど明日だったら大丈夫ですよー。後でひじきちゃんも誘いに行こう」
「うん。」

ぐすっと鼻をすする音がして回されていた手から解放される。
ふりかえって顔を確認してみれば凄く申し訳なさそうな顔をして「ごめんね」と謝られて「いいえ」と笑顔で返す。そっと頭をなでれば柔らかく笑う姿を見て何はともあれどこかの世界線がすくわれたらしいと、後ろの方で見ていた猫市と影の拍手がぱちぱちと教室に響いた。









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けらこさんへ。







本   ∧ ∧
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