放課後の図書室。
私が最後ということであずかってた鍵でガチャリと戸を閉め、顔を上げれば夕焼けがまぶしくて思わず眼を細める。
嗚呼きれいな夕焼けだなぁとぼんやりすれば不意にからからと教室の戸が開く音がして視線を向ければ、いつかどこかで見た事のある銀色の髪の男の人がにこにこと笑っていた。

「こんにちは」
「こ、こんにちは」

なんだっけ、どこでみたんだっけとぐるぐると考えていると「今から帰るの?」と聞かれて思わず「ハイ」と答えてしまう。
三年生の教室から出てきたということは先輩なんだろう。先輩はさっきまでいた教室に鍵をかけている。多分先輩の教室にいたのも彼で最後だったんだろうと鍵をポケットにしまいこむのを眺めていたのだけれどふとおかしいことに気づく。
「先輩も今からお帰りですか」と問えば「うんそうだよ」きらきら光る眼を細めてこちらへ歩いてくる。
おかしい。おかしい。なにがおかしいって手元に一切荷物を持っていない。
日直の人が持っていくであろうノートも、荷物を入れるであろうカバンも持たずに手ぶらでこっちに来る。
いくら教科書をおき勉してるからって手ぶらということはあり得るのだろうか。
いや俗に言う不良とか言う人だったならあるかもしれないけど、目の前の人は容姿は目立つとはいえ不良とかいう類には見えなかった。普通に挨拶してくれてるし。
ゆっくりこっちに歩いてくる先輩を見つめながら違和感に不安感だけが湧き上がる。
なにが、いったい、なんでだろう。
わからない。わからないけど、これはきっと。


「ねぇ」
「何ですか」
「それはいったい」


「なあに?」と問いかけが言い終わる前に走りだした。




「あや。」
あっという間に踵を返して階段を駆け降りる少女を見て思わず声がもれる。
ちょっとだけまじめにやったけど怖がらせちゃったかなぁなんて思いながら、溜息を吐いた。
使うつもりはなかった。なかったのだがなんというか思い切り誤解をさせてしまった上にとっとと誤解をとかないと面倒な予感がする。いやまァ結果によっては誤解では済まないだが。
たたたたと響く足音が中二階にさしかかったところで呟く。




「ペオスヤオラ≪秘密よ 開花せよ≫










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