「何を考えている。」

長官と話した車庫と言うべき部屋を出るなり言われた一言に思わずいみがわからなかった。
あのままの勢いで会合は無理矢理切り上げたが私の「人間=食べ物」発言により、部屋に一人で戻すのは危険、だが人をつけてもトランスフォーマ達と逃げまくりとは言え一人でドンパチやらかした私とではもし襲われても抵抗できないということで、オートボットとディセプティコンの両軍から見張りをつけておくという話になった。
別に何もする気はないが断る理由もないのでまぁ勝手についてくるだろうと無視して車椅子を動かした結果、部屋を出ようとする頃には両脇をのしのしと歩くロボが2体いた。間近で見ると威圧感まじパネェっす。
基本的に今は(主に私のせいで)人を出払わせているだろうから、道には誰もいないし、多分会話もないし、移動中絶対重い空気になるんだろうなと思った矢先に予想外の発言だ。呆気にとられたのも仕方ない。




「どういうこと?」

「あれは嘘だろう」



ゆっくりと踏まれないように進みながら尋ねると、
ブラックアウトはこちらを一瞬だけみてそういった。



「俺はお前が人間を食べているのを見たことがない」

「食事風景なんてあんまり見せるもんじゃないでしょう。」

「外で食べていたと?愚鈍といっていいほど慎重なお前が?3年以上もの間、俺達に嘘をつき、外と一切交わることすら諦めさせ、居場所すら自ら晒すまでつかませなかったお前が、自分の縄張りの外の世界で、一人いなくなるだけで大騒ぎする人間を、捕まえて食べてたと?」



立ち止まられずいと顔を寄せられる。
的を得た発言に舌打ちしそうになるがそんなことすればいとも簡単に肯定に結び付く。ぎらりと輝く赤い目の中では、隠され写ってない私の顔をどうとらえているのだろうか。

「君の身体はエネルギーを消費することによって細胞が死滅しても"生き返る"様にできている。」




「だが、その回復速度の記録は、君が初めて我々と敵対した時から着実に落ちている。」





とりあえずどうにかして真実を撒いてしまおうと口を開けば、またしても不意に上がった声に思わず振り返ると淡々とした口調とは裏腹に、黄緑色の機体をしたオートボットの軍医が苦々しいものを見るように、「どんな生物でもエネルギーを摂取しないと身体は弱っていく一方だ。」といった。





「そして、いま」



「自らの身体が再生できない程になっている。」




まるで此方に視線を合わせやすいようにと膝をつき、ゆっくりと目を伏せながら、包帯まみれの私を見つめてそう告げれば、「まさか」と、小さな声をブラックアウトが漏らした。
そしてブラックアウトがその思考に行きつくのが当然だったように、私もこの二人が考えてることに気付いた。


ああくそ、なぜ、なぜよりにもよってこの軍医が共についてきたのだろうか。
ブラックアウトだけならばうまく撒けたかも知れない。
軍医だけならそもそも言葉を交わすことはなかっただろう。
だが、二人の持っていた情報が合わさってしまった今、真実を撒くどころか余計な事実まで露呈してしまいそうだった。




「君は、」


ああ、ラチェット軍医。
貴方ってひとは、本当に





「三年以上食事というものをまともにとっていないね」







フィンガーボールの水を飲み干す。

(余計な優しさはいらないのに)
















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