「やぁジャズ。」
右手をあげてカラカラと自動車椅子を操縦しながら笑えば目の前のソルティスが不満げにブォンと廃棄音を立てた。

「久しぶりの再会はどうだった?」
《お前が落っことしたせいで復帰直後にリペアいきで散々だったよ》
「あら。」

一応重さやら体格やらを考慮してまとめて落としたんだけどなぁと言えば。《一番下のオプティマスはほぼ無傷だった。》との返事が返ってきた。ああ装甲の問題か。
ぼんやりとならばブラックアウトもヤバイだろうな。と考えながらするするとそばによるとソルティスがカチャカチャと音をたてながら変化する。相変わらずこの光景は壮観だ。私にとっても機械の取り扱いなんて“我が家のジュークボックスは右下を軽い蹴ると治る”程度の知識しかない。


「で?正直な本音は?」
「そりゃ嬉しかったさ。でもな」
「うん?」
「どうしてそんなになるまで俺達を返さなかったんだ」


「二人が協力組んでもういいって判断した時点で俺達を返せばよかっただろ」といいながらまるでちゃんとした理由がわかるまで動かないぞと言わんばかりに座り込むのをみておやと目を丸くする。
てっきり騙した(というより言葉の表現を多少アレンジして誤解しやすいようにしたので嘘はいってない)のを怒っているのかと思ったが全く違うかったらしい。だがこの問いの答えはひどく簡単だ。

「不完全燃焼させないためよ」
「不完全燃焼?」
「そう。やっとこさ手を組んで盛り上がってきてあともうちょっとー!!ってところでハイストーップ!!なんてされるともやもやするでしょう?徹底的に、完膚無きまで、私を、倒してもらう必要があったの」


だから今まで私の方からの強襲ヒットアンドアウェイ戦闘じゃなく、正面きって向こうが強襲できるようにわざわざ調整したのだ。
途中でなげて別のベクトルに力がいかないように。全部の力を一点集中できるように。ぜんぶ、全部、全部。


「それにほら、共同で目標を達成した方が仲間意識が強まるんじゃないかなと」
「……そういうもんか?」
「そういうもんよ」


「事実多少は譲歩しあうようになったんじゃない?」と笑えばどこか心当たりがあるのかなにか納得したようだった。関係なんて切っ掛け一つでガラッとかわるものなのだ。切っ掛けがないなら切っ掛けを作ればいい。作って作って作り続けて、ここまでこぎ着けた。これは一重に私の努力の賜物だ。



「それにまぁ」
「うん?」
「最後ぐらいおもいっきり嫌がらせしてもいいかなって!!!!」




なにせ数年単位で相手の尻拭いをしてきたのだ。
ちょっとぐらい相手の弱みというか責任感というか罪悪感というものを煽りまくって胃痛でも起こせばいい。己の為には我が身惜しまず。これ私のモットーですよ。爽快な笑顔でザマァ!!!!って言えたのでええ本当にすっきりしました。と上機嫌で笑えば真上のジャズが大きくため息をついた。
その視線に合わせるようにもう少し近づけばこつりと車椅子があたる。ううん面倒だから借りたけどやっぱり微妙に邪魔だなこれと眉間にシワを寄せればぶつかった足をずらされた。なぜよける。

「なぁマツリ。」
「なに?」
「お前がなにやるかは勝手だけどな。」



「そんなになんならあんまりそういうことするんじゃないぞ」と頭をぐいぐいと撫でながらそういわれて、意味がよくわからなかった。ぐるりと一つの可能性が私の頭を回る。だがそんな訳がない。私のやってきたことを思い返せ。自意識過剰にも程がある。
都合のいいことを考え出す脳を叱咤しながら笑う。嘲う。
そんな、まるで、


「大丈夫よ。だってわたし」













「悪魔だもの。」









心配されてるみたいじゃないかなんて。












汝、溺れることなかれ。

(ありえないことだと私は知っている)








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